スイマー

白川 優雨 (しらかわ ゆう)

スイマー

 部屋の灯りを消す。携帯にコードを差し込んで、窓を眺めた。街灯の光が水で濡らしたようにぼやけてる。じっと見つめた後、ベットに座った。

 コップに口をつける。水位は変わってない。結露の水が次々と出来ては滴り落ちる。なんだか水滴が滝になる気がして、もう一度口をつける。水はすぐに無くなった。

 ベッドの僅かな隙間に、体をねじ込む。ふるふると携帯を取り、電話帳を開く。指がクルクルと画面上で回る。白い光を消して、指は手のひらに帰った。毛布に包まる。埃が舞っていた。

 もう一度携帯に目をやると、コードがコンセントからピンと張っている。ゆらゆらと揺れるそれを引き抜き、また電話帳を映し出す。

 2度も迷子になった指は、遂に帰ることなく携帯の横に落ちて、沈んだ。泳いでも泳いでも進まない。が、足はまだ泳いでいる。

 その六畳間には、顔を枕に埋め込んで、唸り声をあげる女だけがいた。明日も、きっと声は1人分。

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スイマー 白川 優雨 (しらかわ ゆう) @Syafukasu

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