幸運 ♪【お題「手」】カクヨムコン11お題フェス参加作品

紗織《さおり》

幸 運 ♪

「あ~~~~、全部はずれだぁ!!!


 どうしてスクラッチが全部はずれなの?


 占いには『今日のあなたは人生で最高の運勢です。』ってちゃんと書いてあったのに、この結果は絶対におかしいわ。」


 美海は、ぷりぷり怒りながら、はずれくじをくしゃくしゃっと丸めてゴミ箱に向かって投げた。


「うわぁ~、危ない。」


 なんとちょうど通りかかった自転車が、自分の方に飛んできたくじに驚いて、横転してしまった。



「えっどうしよう!


 ごめんなさい、大丈夫ですか?」


 美海は、慌てて転んだ自転車に駆け寄った。



「大丈夫です。ちょっとびっくりして・・・。


 あっ、まずい。こんな所で止まっている時間なんて無いんだった。


 それじゃあ僕、急いでいますので、これで。」


 転んだ男性は、あたふた起き上がったかと思うと、すぐに自転車の体勢も整えて走り去ってしまった。



 「何?今の人。


 結構ちゃんと転んだはずなのに、もう行っちゃったわ。


 本当に大丈夫だったのかしら?」


 美海は、あまりに色んな事が一度に起きすぎて、どうしていいのかわからなくなってしまった。




 「えっと・・・、とりあえず、私は学校にでも向かおうかな。」


 美海は、自分の気分を落ち着かせてから、いつも通り大学へと向かった。




 『まずはスクラッチで軍資金を得て、10億をもらうべくそれで宝くじを買う』


 こうして彼女が抱いた『最高の運勢の実現構想』は、いまやすっかり色あせてしまっていた。



 その日の夜、美海は布団に入ってから今日の事を思い返していた。


 (あんなにいい占いがでて、めっちゃウキウキしていたのに、結局何も良いことがない普通の一日だったなぁ。


 そういえば、あの転んじゃった人、一瞬しか見なかったけれど結構イケメンだった気もしたな。


 イケメン君、本当にケガしていなかったのかなぁ?



 まぁ、もう2度と会うこともないから、考えてもしょうがないかぁ。)



 一瞬で目の前から消え去ってしまった名前も何も分からないイケメン君・・・。


 こんな情報だけでは、これ以上何も考えは進まないので、美海は考えるのを止めて眠ることにした。



 1週間後。


 美海は、あの宝くじ売り場の前で、イケメン君にばったり再会しました。




 いいえ、もちろん偶然ではありません。


 美海は、頑張ったのです。





 1週間前の夜。


 美海は、なかなか眠れなかったのです。


 一瞬しか見なかったイケメン君の顔が、何故か脳裏に焼き付いてしまって、離れなくなってしまったのです。





 もう一度会えないかな?


 でも、どうやって・・・。


 今まで会えなかった人なのに・・・。





 いや、今日会えたんだから、きっとまた会える。


 今日出会った場所に、なるべく何回も行くようにしよう。




 こうした美海の行動の結果が、1週間後に現れたのです。


 自転車に乗ったイケメン君は、通りの向こうからこちらへと走って来ています。



 「すみません!」


 美海は、自転車に向かって手を振りながら、声を掛けた。



 イケメン君は、自分に手を振る美海に気が付いて、彼女の前で止まった。


「先日は、突然転ばせてしまってすみませんでした。



 もう一度ちゃんと謝りたくって・・・。


 今日、お会いすることが出来て良かったです。」


美海は、イケメン君に会った時に言おうと考えていたセリフを一気に話した。


「あっ、いいえ。


 本当に大丈夫ですよ。ケガも大したことありませんでしたから。」


 イケメン君は、笑顔で答えてくれた。



(嬉しい。イケメン君も私の事をちゃんと覚えていてくれたんだ)


美海は、ぱぁっと赤面になってしまった。


事前に考えていたセリフ以外の新たな言葉が頭の中に何も浮かんで来なかった。


そう美海は緊張してしまったのだ。


(どうしよう・・・。せっかく立ち止まってくれたのに、私何も言えない。

 あ~~ん、何やっているんだ、私!)


「あの、あの・・・、よくここを通るんですか?」


 「いや、今日が多分最後かな。


 ここに来たのは、たまたま先輩のバイトを手伝って欲しいって言われたからなんだ。


 だから、先週と今日だけここを通ったんだよ。」


 イケメン君は、さらっと答えた。


(えっ、もうここには来ないの・・・。ようやく会えたのに、すごくショック。)


 美海は、落ち込んでしまった。



 「あのね、僕、今日君に会えて、良かったよ。


 驚かないで聞いてね。

 実は、この間君に会った後、君のビックリした顔が頭に焼き付いてしまって、忘れられなかったんだよ。」


 イケメン君がビックリする告白をしてくれた。


「わ、わ、私もです。私もイケメン君の顔が忘れられなかったんです!」


(あっ、思わずイケメン君って言っちゃった・・・。どうしよう、ずっとそう呼んでいたから、つい・・・。恥ずかしい・・・。)


 美海は、またもや真っ赤になってしまった。


「イケメン君なんて僕の事を呼んでくれてありがとう。


 

 知っているかい?あの時の君は、瞳がこぼれ落ちちゃうんじゃないかって心配するくらい大きな目になっていたんだよ。

 

 そして今は、真っ赤になったり、暗い顔になったり・・・。ふふ。


 君は、表情がクルクル変わって可愛いね。




 もしよかったら、君の名前を聞いてもいいかな?


 僕の名前は、一条 響って言うんだ。」


 イケメン君は、美海の心臓が飛び出てしまいそうな事を言った。





 この不思議な出会いから、2人の将来を共に歩む人生が始まったのである。



 


 そうです。


 美海は、『人生で最高の運勢』をちゃあんとあの日手に入れたのです。

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幸運 ♪【お題「手」】カクヨムコン11お題フェス参加作品 紗織《さおり》 @SaoriH

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