嫌いなヤツがここにいる

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自己の破壊と再生

嫌いなやつがここにいる。

今まさに目の前に。

いや、心の中に。それとも頭の中か。


頭の先からつま先まで血液の循環と同じように

気持ち悪い自分が絶えず流れ続けている。


どこから入ってきたのか。

いつか食べたあの夕飯の中に紛れ込んでいたのか。

消化されることなく、もちろん排泄もされず

食うことで細胞が喜び、栄養となり

血肉となり嫌いな自分を成長させていく。

なんとも醜い話だとは思わないかね。



汚い自分が汚い自分の中を巡っている。


インターネットの中で正解を求めて

同じ境遇の人間がいれば首を縦に振って

お互いに生ぬるい言葉の泥にはまる。

情けない奴。汚い奴。


真っ暗になった画面を見ると怖くなる。

そこに映るやつに恐怖する。


自己愛だとか自己受容だとか。


我々は"自己"とつく言葉を嫌う。

人のせいに出来なくなるから。

環境のせいに出来なくなるから。


強いて言うなら"自己中心"

これがお似合い。

あとは"自己嫌悪"か。


あぁ、もう嫌になってきた。


嫌なら辞めればいい。

どうせいつか辞めるんだから。


この文章も。自身の人生も。


くだらないことに脳みそを使っていないで

人のためになるようなこと、一つや二つ

やってみろ。


自分のために動けないやつが

人のためだなんだと言って

動けるわけが無いか。


悲観さえしていれば可哀想な奴になれる。


明るい未来なんて訪れない。

裕福な暮らしなんて手にできるわけが無い。


どうせ最初からわかっていたこと。


そう思い込んでいれば

これ以上自分自身に落胆することは無い。

「ほら予想通りだろ?」って。




一筋の光なんてものは

生まれ落ちた時に光が差し込んでいるかどうか。

それだけでしかない。


元から光が差していない奴らは

無理にでも上へ上へ掘り進めて

生涯をかけて光の差し込む場所を探し当てるか

暗く冷たい土の中で一生を終えるか。


多くの人間は前者を望むだろう。

幼い時には夢や希望を抱き

己の可能性のみを見つめて信じて疑わず

ひたすらに掘り進める。


しかしいつか気付く。

頭上には硬く分厚い岩盤があることに。


意気揚々「なんのこれしき」と

叩き割ろうにもそれまでの人生で備えた

貧弱な装備では到底叩き割ることなんて出来ない。


もっといい装備を与えられていれば。

もっといい装備が売られてさえいれば。


そう思いながら一応岩盤を叩く。


叩いては休んで。

休んでは叩いて。



繰り返してるうちに一休みの回数は増え

自分の体温でじんわりと暖かくなってきた頃

なんとなく居心地が良くなる。

「これでいい、これがいい」

と、その時の自分にぴったりな言い訳を作って

自分を騙して一生暗く冷たい土の中で

光を見ることなく養分となって消えていく。


「大した学歴がないから」

「タイパ重視の人生だから」

「普通が1番」


いつからだろうか。

将来の夢に「普通の人生」を

掲げるようになってしまったのは。


そうじゃなかっただろう。

そんなはずじゃなかっただろう。



いくら上へ上へ掘り進めても

光なんて差し込まない。

息が吸えない。苦しい。

辺りは真っ暗で途方もない。

今自分がどこにいるのか・何をしているのか。

とにかく怖くて仕方がない。


それでも傷だらけで土まみれの手で

足掻いて歯食いしばって

土を食いながら掘るんだよ。


モグラに出来ることが

私たちにできないわけが無い。


やつは目が見えないんだ。


私たちは心に目がある。

その目で一点を見つめることが出来る。


光がなくたって、道が分からなくたって

自分の心に一つの光を灯して

それのみを頼りに掘るだけでいい。


一休みしたっていい。

道を間違えたっていい。

引き返してみてもいい。

途中で出会った誰かと助け合ってもいい。


心に灯した光さえ見失わなければ

たとえ道半ばで朽ち果てて養分になろうとも。

きっとそれは後から続く人間の糧となって

道標になる。


ただの養分で終わってたまるか。


今まで心が壊れないように守ってくれた弱い自己に

敬礼が出来れば、後に残るのはもう見失うことの無い"自己"だろう。


誰にも壊させない。

自分で壊すことも傷つけることも出来ない。


そんな最強の武器。

この世にふたつとない。

それを持てた時。


その時はカッコつけよう。


「これが私の聖剣エクスカリバーだ!」って。












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