第18話 麗人

「お待ちしておりました」

ふいに背後から声がした。

私は驚いて

先生に叱られた子供のように

恐る恐る振り向いた。

声の主を見て私は言葉を失った。

その声色からは女性だと思ったのだが、

果たしてそれが正しいのか、

私には判断がつかなかった。

そこに立っていたのは、

黒い細身のパンツに

真っ白なシャツを着た人物だった。

両肩にかかるサスペンダーと

首元の蝶ネクタイ。

色白できめの細かい肌とは対照的に

黒く艶のある髪は、

女性としては短く、

男性ならば長い部類に入るだろう。

切れ長の鋭い目は睨んだ者を

一瞬で黙らせてしまいそうな

迫力があった。

スッと通った鼻はツンと高く、

薄い唇は鮮やかな赤に染まっていた。

身長は私よりも高い。

それは女性ならば高いといえるが、

男性であれば平均的な身長だった。

年の頃は20代半ばだろうか。

いずれにしても。

恐ろしいほどに美人だった。

この浮世離れした美しさは

現実のモノなのか。

私は完全に目を奪われていた。

それは歌川と小鳥遊にしても同じだった。

2人共ただ茫然と立ち竦んでいた。


「どうされましたか?」

その人物がふたたび口を開いた。

その時。

私の目がシャツの胸元の

小さな膨らみを捉えた。

そこでようやく

私はその人物が

女性であることを理解した。

男装の麗人。

女性にしては凛々しすぎて、

男性にしては美しすぎる。

「やや。

 これは失礼しました。

 本日、

 大烏くんに招待された歌川と言います。

 こちらは小鳥遊さんで、

 そっちが三ノ宮です」

「大烏様よりお話は伺っています。

 こちらへどうぞ」

男装の麗人は目を細めると、

背を向けて歩き出した。

私達は後に続いた。

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