第9話 Xデー

Xデーはすぐにやってきた。


その日。

家の中は朝から騒がしかった。

慌ただしく動き回る両親を尻目に

私は1人、

ソファーに座って

フロランタンをかじっていた。

部屋の中には

大きな旅行鞄が2つ用意されていた。

そしてその横に

小さなバッグが置かれていた。

バッグには私の荷物が入っていることを

昨夜私は母に聞かされていた。

母に言われたことはもう1つ。

私は今日から少しの間、

秋好さんの家にお泊りする

ということだった。

私がなぜかと理由を聞くと、

母の母、

つまり祖母の具合が良くないので

両親はそのお見舞いに行く

ということだった。

祖母は今でいうところのシングルマザーで

1人で母を育てたのだ。

私も一緒に行くと駄々をこねたが、

子供には大変だから

いい子でお留守番をするように

と言われた。

何が大変なのか

その時はわからなかったが、

今では理解できる。

母の故郷は外国だった。

私の母はインドで生まれ育った

生粋のインド人なのだ。


両親は父のインド留学中に出会い、

そして恋に落ちた。

母は父の帰国と共に日本へ来て、

2人は一緒に暮らし始めた。

1年後。

2人は結婚した。

祖母は2人を祝福したが、

資産家である父の実家は、

2人の結婚を認めなかった。

特に三ノ宮家の現当主である祖父が

外国人である母との結婚に反対したのだ。

結果。

父は実家を勘当された。

だから私は三ノ宮家の人間とは

一度も会ったことがない。


私がフロランタンを食べ終えた時、

インターホンが鳴った。

母が対応している間に

私は玄関へ駆け出していた。

玄関に立っていたのは秋好さんだった。

私が彼女に飛びつくと

彼女は私を優しく抱きしめてくれた。

それから。

私達は秋好さんの運転する車で家を出た。

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