第6話 誘拐事件

私が落葉ちゃんの身に起きた出来事を

正確に理解したのは

13歳の時。

自分の不思議な力と

その特性を理解してからのことだ。


私は夢の中で

落葉ちゃんの未来をミたと思っていた。

しかし。

私が夢としてミるのは自分の未来。

これは明らかに矛盾しているが、

別の解釈をすればその矛盾は解消される。

そこへ考えが至った時、

私は絶望した。


あの時。

落葉ちゃんがあの黒い大人に駆け寄った時、

本来であれば私も隣にいたのではないか。

しかし。

事前に見た夢の恐怖が私の体を

恐怖で強張らせたために、

落葉ちゃんだけが駆けていったのだ。

つまり。

本来ならば誘拐されていたのは

落葉ちゃんではなく私だったのだ。

夢の中で車の窓越しに

笑顔で手を振っていた落葉ちゃん。

あれは私が車内から見た光景ではないのか。

夢の終わり、

私の肩に手を回したのは、

私を夢から起こそうとした母ではなく、

車を運転していた

誘拐犯の手だったのではないか。

車に1人で連れ込まれた私は、

それが怖くて

夢の中で泣いていたのではないか。

落葉ちゃんは私の代わりに誘拐されたのだ。


そして。

もう1つ腑に落ちないことがある。

どちらかといえば

私よりも人見知りな落葉ちゃんが

なぜあの黒い人物には

警戒もせずに付いていったのか。

私は思った。

黒い人物は女だったのではないか。

しかし。

たとえそれが正しいとして

今更どうなるというのか。

落葉ちゃんは誘拐され、

帰らぬ人となってしまったのだ。

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