ダンジョンの最奥で手に入れた二刀の剣は、暗黒女帝と大聖女だった
酒とゾンビ/蒸留ロメロ
第1話
賑やかな酒場の
丸テーブルを挟み、俺は3人と向かい合っていた。
「パーティーを抜けたいんです……」
「いきなりだな」
レイさんは、苦笑した。
彼の左隣には細身の若い女性が、右隣には筋肉の隆起した
左が女剣士のエマさん、右が大楯使いのジェイムスさんだ。
リーダーのレイさんを筆頭に、この冒険者パーティー《
「どういうことか説明してくれないか。デイモン」
「説明しなくても、わかってるんじゃないですか?」
パーティーにとって、俺はお荷物だ。
役に立っていないことは言うまでもない。
「いきなりどうしたの、何かあった?」
「悩み事なら聞くぞ、遠慮しないで言ってみろ」
エマさんも、ジェイムスさんも、いい人だ。
加入してから日は浅い。今に至るまで親身にサポートしてくれた。色んなことを教えてくれた。だからこそ、これ以上居座るわけにはいかない。
「俺は役立たずです」
レイさんがすぐに否定する。
「そんなことはないだろう」
「俺の役割って、周囲に敵がいないことを確認したりとか……それくらい、ですよね」
改めて考えてみると浮かばないもんだ。
どうやら思っていた以上に、俺は役に立っていなかったらしい。
「鑑定もだろ」とジェイムスさんが気遣う。 「知らん色の木の実とか、草とか、色々調べてくれてるじゃないか、採取する前に」
「そうでしたね。じゃあ、その二つくらいですか……」
「それで、抜ける理由は? 言い出しづらいなら、それまで待つわ」
エマさんはそう言った。
口ぶりからして、わかっていて言っているんだろう。
前衛から中衛までを担当するレイさんに、前衛のみを担当する二人。
対して、俺は中衛から後衛までを担当する。
俺は、前衛にいけない。
それが不満ってわけじゃない。俺の実力に合わせて、3人は後衛での加入を認めてくれた。なのに……。
敵との接的な接触がほとんどない、優しい役割であるというのに、俺は役を果たしきれていない。
3人の優しさによって、俺はこのパーティーに所属していられる。
みんなは演技をしているわけだ。俺に核心を言わせないために。
気にする必要はない、お前はパーティーにいてもいんだ……と。
そういうわけには、いかない。
「みなさんには、《
俺が、3人の夢を妨げている。
「これ以上、みなさんの足を引っ張りたくないんです」
「だから、どういうことよ。あなたがいつ、私たちに迷惑をかけたのよ」
「今一つ理由がわからないな。デイモン、君は十分、僕らの助けになっているじゃないか」
レイさんがそう言うと、ジェイムスさんも肯定した。
「レイの言うとおりだ。お前の索敵能力は……」
「俺では力不足です。流石に俺自身もわかってますよ」
ジェイムスさんの慰めを遮り、俺はそう言い放った。
これ以上、3人に気を遣わせたくなかった。
名が通っているパーティーだし、後釜はいくらでも見つかるだろう。
「何もしてないのに報酬だけ貰うって、結構、罪悪感あるんですよ……」
俺は席を立ち、
「今まで、ありがとうございました」
その場から走り去った。
3人の呼び止める声が聞こえた。振り返らず、俺は酒場をあとにした。
▽
旧市街のど真ん中に位置する広大な中央広場は、沢山の冒険者たちで賑わっていた。
沢山のパーティーの姿があった。
どれだけ少数であろうと、誰もが必ずパーティー組む。
この広場の中心に、空高く
外観は細長く、天辺は雲に隠れていてよく見えない。
快晴の日は、尖った先っぽが見えることもある。
塔の中は階層によって分かれている。
現在到達が確認されているのは、9階層までだ。
俺は一人で、《
薄暗い回廊が続いている。
明かりは、天井に等間隔に設置された橙色の豆電球だけだ。
回廊を抜けると古城の内部――大食堂に出た。第一階層の
テーブルを囲む冒険者の姿がちらほらあった。城内には
大手冒険者ギルド 《
空いている席に腰かけた。ポケットから
これは
アプリ〈
これまではパーティーに所属していたから、レイさんが代表して、《
これからはソロだし、自分だけのものが必要になるだろう。
――――――――――――――
名前:デイモン
年齢:17歳
職種:支援系
経歴:中衛から後衛での支援経験あり
階層:3
特技:下記のスキルが使えます。
〈
自己紹介欄:ソロで冒険者やってます。
――――――――――――――
「これで、いいかな……」
アカウント作成ボタンを押そうとして、指が止まった。
〈階層:3〉とは、到達階層のことだ。
三階層までなら行ったことがあるが、それはレイさんたちがいたからだ。
一人となれば違う。
「階層は、〈1〉が妥当だな」
情けないのはスキルだ。たったの4つしかない。
レイさたちは色んなスキルを持っているらしいが、俺はこれしか知らない。
「正直に記載しておくか。嘘じゃないしな。あとは……年齢から経歴までを非公開にしておこう」
俺とパーティーを組んでください、とアピールしているようで嫌になった。
今さっき自分からパーティーを抜けてきた分際で、そんなことはできない。
「こんなところでいいか」
見栄はない。
仮にレイさんたちに見られたとしても、嘘じゃないから俺も罪悪感がない。
もっとも、あの人たちは何も思わないだろうが。
念のため、名前は〈名無しの冒険者〉としておこう。これでパーティーを組みたがる冒険者はいないだろう。
アカウントページが作成された。
――――――――――――――
名無しの冒険者
階層:1
ホスト:0 クライアント:0
下記のスキルが使えます。
〈
ソロで冒険者やってます。
――――――――――――――
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