第5話 最強のバックオフィス、降臨
「健斗さん……ここ、どこですか? 私、コミケの設営に行こうと思って駅にいたはずなんですけど……」
タクミに続いて光の渦から現れたのは、厚いレンズの眼鏡を指で押し上げる小柄な女性、**水樹 凛(ミズキ リン)**だった。 健斗の不動産会社時代の後輩で、営業成績こそ振るわないものの、彼女が作る「物件チラシ」と「間取り図」は、内見成約率100%を誇る芸術品。さらに簿記2級を保持し、1円単位のズレも許さない管理能力の持ち主だ。
「よう、リン。急に呼んで悪かったな」 「悪かったな、じゃないですよ! 目の前に……あれ、何ですか? 骨が歩いてますけど!?」 「ああ、あれはただの『警備員(スケルトン)』のデモだ。気にするな」
健斗は、パニック寸前のリンに一枚の「図面」を見せた。異世界のギルドが適当に描いた、羊皮紙の汚い地図だ。
「リン、お前の力が必要だ。この世界の不動産は、契約も経理も図面も全部めちゃくちゃなんだ。客に夢を見せる『パース(完成予想図)』が描けて、悪徳貴族の裏帳簿を暴ける簿記の知識があるのは、お前しかいない」
リンは震えながらも、差し出された羊皮紙をじっと見つめた。 そして、プロとしてのスイッチがカチリと入る。
「……健斗さん。この図面、北向きの表記がズレてますし、何より縮尺が適当すぎて法務局なら即突き返されるレベルです。……それに、この経理報告書。ここ、使途不明金が金貨200枚分もありますよ?」 「だろ? こっちは伏魔殿だ。お前が『管理部長』として目を光らせてくれないと、俺とタクミはすぐ破産しちまう」
リンはため息をつき、リュックから愛用のiPadと、使い古された電卓を取り出した。 「わかりました……。やるからには、この街の固定資産税の概念から作り直してあげます。あと、このボロ屋の間取り、私が書き直して『住みたくなる物件』に仕上げますから」
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