陰キャな俺、マッサージスキルで1万人癒やせば「飛行」できるらしい。〜脂肪再配置と不可視の手で、アイドルやマドンナをトロトロに溶かして徳を積みます〜

大気圏

第1話 陰キャな僕と、神の指先

メインで書いている方が、編集作業で更新できないので、以前使っておいたものを載せます

よければ読んでみてください(ノ∀`)

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鏡の中に映っているのは、今日も相変わらず、湿気ったモヤシのような僕だった。


高木翔太、16歳。高校2年生。


身長は178センチと無駄にデカいが、重力に負け続けた結果としての猫背のせいで、実際はもっと小さく見える。長い前髪の隙間から、度の強い眼鏡が光る。クラスでの僕の存在感は、机の角に溜まった埃と同じくらいだ。


そんな僕の目の前に、今、おかしなものが浮いている。


「……なんだこれ。寝ぼけてるのか?」


視界の端に、半透明のウィンドウが浮かんでいた。ゲームのステータス画面みたいなやつだ。

スキルや魔法なんてものはゲームやラノベの中だけの話。

いつからこの世界は創作の世界に突入したんだと、疑いながら、書かれている文字を眺める。


【スキルボード】

基本スキル:マッサージ Lv1

累積施術人数:0人


「マッサージ……?」


脳内に直接、情報の奔流が流れ込んできた。

触れるだけで相手を癒やし、若返らせ、脂肪を再配置し、さらには女性には最高のリラクゼーションを与える……。

まるで深夜の怪しい広告のような内容だが、僕の心臓を射抜いたのはそこじゃない。


【累積人数ボーナス】

・100人 :不可視の手

・1000人:透明化

・2000人:テレポート

     ・

     ・

     ・

・10000人:フライ(飛行)


「ひ、飛行……!? 空を飛べるのか!?」


僕は思わず叫びそうになった。

ゲームやラノベの中だけの特権だと思っていた「飛行」。

さっきまでスキルを疑っていた自分はどこはやら、もし本当に空が飛べるなら、この窮屈な学校生活からも、自分自身の情けない殻からも、文字通り飛び立てるんじゃないか?


1万人。とてつもない数字だ。

普通なら絶望するだろう。でも、今の僕には、先ほど脳内に流れ込んできた情報と「マッサージ」という武器がある。

一応、効果を確認しておこう。


マッサージ(Lv1)

触れた部位の血流・リンパを完璧に制御。

男性 : 温泉に入っているような心地よさ

女性:至福の快感

共通:アンチエイジング(-10歳)、デトックス(脂肪排出・病原菌排出)、骨格矯正。


「……これ、エステティシャンも医者も廃業するレベルじゃないか?」


半信半疑のまま、僕はリビングへ向かった。

そこには、僕の将来の姿を予見させるような、疲れ切った中年男性――父さんが座っていた。


「ああ、翔太か……。おはよ……痛たたた……。最近、腰が限界だわ……」


父・健一、45歳。

サラリーマンとしての激務の証か、顔には深いシミがあり、背中は僕以上に丸まっている。

実験台としては、これ以上ない素材だ。


「……父さん、ちょっとマッサージ、してみようか?」


「え? お前が? 珍しいな。どうした、小遣いでも欲しいのか?」


「……いや、学校で、ちょっとコツを教わったから」


嘘だ。学校でインキャ仲間と喋る以外は、誰かと喋る事はほぼない。

僕は震える手で、父さんのガチガチに固まった肩に触れた。

その瞬間、指先に「視覚」が宿った。

皮膚の下、筋肉がどう癒着し、どこに老廃物が溜まっているかが、手に取るようにわかる。

指が勝手に動いた。


「ん、お? おおっ……!? そこだ、そこ……。お前、意外と力が……いや、力じゃないな。なんだ、この吸い付くような感覚は……」


グッ、と一箇所を指圧する。

スキルが発動し、指先から温かいエネルギーが流れ込む感覚があった。


「うあ、あああぁぁ……気持ちいい……。温泉に入って浮いてるみたいだ……」


父さんの口から、普段の厳格さとは程遠い、ふにゃふにゃの声が漏れる。

ついでに、アンチエイジングの効果も発動させてみる。

シミよ、消えろ。と念じながら。


「――よし、これくらいかな」


5分ほどして手を離すと、そこには劇的な変化があった。


「……あれ? 腰が……軽い。え、痛くない!?」


立ち上がった父さんの背筋はピンと伸び、顔のシミは目に見えて薄くなっていた。

何より、肌のツヤが10歳は若返っている。


「翔太、お前……これ、すごいぞ! こんなすごい才能があったなんて! 」


父さんは興奮して僕の肩を掴んだ。

陰キャな息子を心配していたはずの父さんが、見たこともないような笑顔を見せている。

誰かの役に立てた、という感覚。それが、思った以上に僕の心に温かく響いた。


「そうだ、翔太。お前の妹の恵美、覚えてるか? あいつ、街でリラクゼーションサロンやってるだろ。一度、顔を出してみろよ。この腕前なら、絶対驚くぞ!」


こうして、僕の「空を飛ぶための1万人マッサージ計画」が、図らずも家族公認で動き出すことになった。


【現在の実績】

累積施術人数:1人(父・健一)

ボーナスまで:あと99人


……あと9999人で、僕は空を飛べる。

人見知りの僕にとって、エベレストより高い壁だけど、やってみる価値はあるかもしれない。

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