マグロ魔法を振りまき奉仕により変態したおじさん(無敵)~chu♡魔法少女コンデンスミルク♡~

ジャミゴンズ

第1話 黒歴史、メタモルフォーゼ





 2031年・東京。

 仕事に疲れて空を見上げている、宇宙に興味を持っている一般的な一人のおっさんが、天体観測を始める。

 最初に行った観測で、月の近くでぼんやりと映るアメーバらしき物体を発見。

 レンズに汚れ?

 おっさんは何度か丁寧に布で拭いながら、観測を続けるがアメーバーは消えなかった。


 一体これは何か、と考えているうちにアメーバは人型へと変貌し、瞬間、望遠鏡からはその姿が消えてしまう。


 と、次の瞬間、一人の少女が真後ろから声をかけてきた。


「―――×▼○。 調声・翻訳共に正常。 初めまして、ご主人様。私は奉仕種族、型番c78-19797+2です。 今、あなた様に観測された事によって忠実なる下僕となりました。 宜しくお願いします」 


 おっさんはたっぷりと熟考し、中腰の姿勢を保ったまま口を開いた。


「……宇宙人の方ですか?」

「宇宙人、ですか? おそらくご主人様の仰る宇宙人として定義されているモノとは違うと思われます。 一番近いこの星の定義は、不定形の液状生命霊・超流動アストラル金属・人工生・ダークマター・分子次元ナノ・オメガシステム等と呼ばれる物に近い素材を組み合わせて作られた霊体ロボット、というのが適当であると推測されます」

「なるほど、ちょっと待ってください」

「はい」


 おっさんは空を見上げて暫くしてからロボットと定義されるそうである少女へ向かって話しかけた。


「なんで割烹着なんですか?」


 とりあえず、今現在で一番気になったことを聞いてみた。

 少女はかなり回りくどく伝わりずらい言い回しで、日本というこの場所で人に仕える際の制服は、これが妥当であると結論付けたと答えた。




 おっさんは考える事をやめた。




 ―――




「ああ、いけません、いけません。 こんな部屋で暮らしていては体に悪うございます」


 おっさんはこの宇宙人から逃げ切ることはできなかった。

 おそらく、捕捉された時点でもうどうにもならなかったのだろう。

 衝撃的な出会いの後、自慢のセダン車をフルスロットル全開で峠道を降りてきたが、この未知の生物を引き離すことは叶わなかった。

 考えてみれば宇宙空間からワープして現れるようなヤツである。

 普通に考えて物理的な速度で引き離せるわけがなかった事に気づいたのは、日が昇ろうかという脂汗をたっぷりと流した後だった。

 逃げられないことがわかったので、人目につかないよう車に乗せて、安アパートの前に戻ってきたばかりである。



「これでも部屋はキレイに片付けている方だと思うが」

「いえ、汚染度がひどいです、一溜りもありません。清浄なる気配は皆無と思われます」

「もっとここに住んでる人の気持ちを汲み取ってほしい」


 なにが悲しくて美少女に擬態している存在不明のナマモノに、汚いと言われなければならないのか。

 ヤケクソ気味におっさんはツッコミ、美少女はなぜか満面の笑みを浮かべて振り返った。


「良いのですか? 御主人様、わたしは嬉しいです。 早速、汲み取らせていただきます」

「うお、おおおお!? ま、待て待て! ストップ!」


 言うが早いか、謎のナマモノは腕を突き出して、おっさんの胸を貫いた。

 言葉遊びではなく、本当に腕が貫通している。そして何かを握られている。

 物理的な意味ではなく、言葉にすることもできない異様な---感覚でしか言えない物を おっさんは握られていた。

 バトル漫画ならここで決着だ。見開きページで心臓を貫かれて次週に繋がるパターンだ。

 間抜けな格好で二人して静止。

 震えた声でおっさんは問う。


「な、何をしている……?」

「気持ちを汲み取ろうと?」

「なん……いや、お前何をいったいどうやって概念を汲み取ろうとしたんだよ」

「気持ちというのは物事に接したときに生じる感情だと学んでいます。 なので、貴方と共に生きることでソレを汲み取ることができます」

「つまり……?」

「心身ともに私と同期することで、それが可能です。 私を受け入れてもらって、御主人様と共に生きることが許されて、とても嬉しいです」


 笑顔で、そして涙を流して。いや、それは本当に涙か?

 おっさんは腕の奥がゆっくりと名状しがたきナニカを掴んでいる感触にうめき、理解しがたい現状に呻くように口から咳が一つでた。

 何もわからないが。

 おっさんは一つだけ、ハッキリと分かったことがある


「すまん、死んだわこれ」


 誰に謝ってるのかもわからないまま、おっさんは謎のナマモノと同化したのであった。




 アパートの一室201号室が一瞬だけ光る。


 これは誕生だった。

 奉仕機械という存在と、人類の代表たるおっさんの。


 そう、人類に奉仕する---おっさんという存在が爆誕したのである。





 ハッっと目を覚ましたとき、おっさんは驚いた。

 謎の生物は消え去り、日常が返ってきていたのだ。

 持ち物も、家の様子もまるで変わっていない。

 ギャンブルはもう辞めよう、という意識から最近に始めた趣味である天体観測。

 帰ってきて意識を失ったら、悪い夢を見ていたかのように宇宙人の痕跡はまるでなかった。



「良かった……はは、疲れているんだろうな。 あまりに非現実的な夢だったぜ……」


 連休で良かった。 明日はいっそストレス解消も兼ねて仕事を休んで3連休にしてしまおうか。

 そんな考えがよぎって、またまた一笑に付す。

 齢40を超えて仕事をサボるなんて発想、まったくまだまだ俺も若いつもりかよ。


「呆れちまうね」


 声に出してみればくだらない思考をちゃんと追い返すことができた。

 肩やら腰やらにダメージが蓄積しつつ年齢になって、思い出すのも苦労するくらいに今日 の体調は悪くない。

 今すぐに健康診断を受ければ、素晴らしい結果が返ってきそうな気もする。

 シュシュっと片手をボクシングのように動かす。

 キレがある。

 きっと気の所為だが、思うように体が動くだけで気分がすこぶる良くなったおっさんである。


 そう思えば、今度は腹の虫がうずいてきた。


 時計を見れば朝9時を回ったばかり。

 手慣れた手つきで出かける準備を済ませ、毎週のように通っている喫茶店へと自然に足が向かう。

 そろそろ季節の変わり目とあって、スイーツが更新される頃だろう。

 おっさんだが、甘い物には目がないのである。

 今日は体調も良いし、糖分を気にすることなく思いっきり食べてみようか?


 玄関を開けて一歩。

 ガラガラヘビみたいな模様を全身にこびりつかせ、口から10メートルはあろうかという 長い舌を振り回すカエルが現れた。


「……」


 そっと扉を閉め、おっさんは何故か襟を正して着けていないネクタイを締めるように首を回した。


「俺は正常だ、俺は正常だ、俺は正常だ、俺は正常だ、俺は正常だ……」


 

 そう念じて、今度はドアに備え付けられている覗き穴の小さなガラス玉から外を見る。

 いや、正常だとは思っているが、外に出て確かめる勇気が足りなかった。


 おっさんの目に飛び込んできたのは、牛のような角が生えていて、体が剛毛に覆われた四肢の見えないナニカだった。


「うそだろ……何が起こっちまったんだ」



 考えてみれば昨日から変だ。異常現象のオンパレードである。

 この科学技術が進んだ世界で、伝承にあるような妖怪みたいな物が蔓延っているなんて信じられるようなものじゃない。


「俺がおかしくなっちまったのか? それともマジであんな怪奇現象が起きているのか!?」

『御主人様、とても慌てているようですが、どうしたのですか?』

「あああああああああ! クソァっ! 夢じゃなかったのかよ! どこにいる!」

『? 御主人様と私は完全に同期しています。 今はうんちっ! って気持ちに溢れています! 私、御主人様の『気持ち』をこの上なく理解しています!』

「はー! まじうんこ! あー、まじうんこ!」


 

 発狂したようにおっさんは身の回りにあるものを、まるで家の鍵や全財産に等しいヘソクリを探すように家財をひっくり返した。

 もちろん、この何か頭の奥から響いてくるような声の持ち主は、そんなことをしても姿を表すはずがない。

 夢じゃなかったのだ。

 あいつ、宇宙人は、寄生生物の類だったのだ。

 となると、外で目撃した謎の生物の大半は、この寄生生物に乗っ取られた人類とかいう可能性だって出てくる。


「お前、一人じゃなかったのか!? 地球をめちゃくちゃにする気か!?」

『ああ、なるほど。御主人様が驚いているのは、私が見ているものが見えているからなんですね』

「は!? どういうことだよ!」

『人間が見える物は、とても限られているということです。 私も御主人様と一体化して初めて知りました』



 ぐっ、と叫びたい気持ちを抑えて、頭の奥で響く声を整理しようとする。

 難しいが、それでも積み重ねた大人としての精神が、なんとか子供じみた癇癪を起こさないようにギリギリ制御できた。

 何度も何度も、同期したという宇宙人の言葉を反芻し、頭の中で意味を探る。

 つまり、もともとああした、その、妖怪みたいな奴らは存在していて人間はただ、気づかなかったということだろう。


 おっさんは思った。

 これは終わったな、と。

 地球が終わったわけではないということは喜んで良いのだろうが、どっちにしろおっさん自身は終わりだ。

 まともな日常生活が、この状態で送れるとは到底思えない。

 近い内に精神に問題ありと指摘され、病院に幽閉されることになるだろう。


 日常ってきっと、綺麗だったのだ。

 おっさんはこの時、普通の景色というものがどれだけ尊い物なのかという事に、40を超えて初めて気づいた。


 ぐるぐると頭の中がぐちゃぐちゃになって、ふさぎ込むように蹲っていたおっさんは、少しだけ顔をあげた。

 おっさんは極々普通の一般人だ。会社に行って怒鳴られて寝るだけの人生をこれからも送るつもりだった。

 英雄願望もないし、承認欲求だってそんなにない。

 若い頃は色々とこじらせたり、やったりもしたけれど、それはともかく、今はもう。

 少しだけ金があって、趣味を楽しんで、適度に仕事をこなし老いて死ねば良いと思っていた。

 嫁には逃げられたが子供だって残したし、一人の男としてはまぁ役目は果たしただろう。

 だから、ある意味でこの宇宙人の被害がおっさんだけになったのは、良いことだと思った。

 被害者が未来ある若者や、赤ちゃんとかじゃなくてマシだったんじゃないかな、と。

 そりゃおっさんだって、嫌だ。

 変な宇宙人に体? 意識を? 半分乗っ取られてしまうなんて。

 今、こうして考えてることそのものだって、思考を乗っ取られているに過ぎないかもしれないのだ。


「俺がオカシクなっただけで済むなら、はは、それはそれで良いか……」


 ひっくり返って、ベッドの上に身を預けながらおっさんは言った。

 何もかもがどうでも良くなってきたのだ。 

 先程まであれだけ疼いていた腹も、まったく満たす気にすらならない。

 人生に幕が下りて、あらゆる事に興味を失った屍のような気分だった。


「へへっ……もう、どうにでも好きにしろよ……」


 見つめていた天井を、瞼を落とすことで消し去り、おっさんは心底からそう吐き出した。


 そして、何もかもを忘れて目を閉じていると、やがてゆっくりと意識を落としたのである。





 ----どうにでも好きにしろ。


 同化が完了している感情は奉仕種族である作られた霊体に、それはもうダイレクトに伝わった。

 そして、おっさんは間違いなく、この奉仕種族の主と認められた人間だった。


 これはある意味、完全に完璧な形で、この奉仕種族への命令として機能した。してしまった。口は禍の元と言うが、この時ばかりは格言がぴったりと嵌ったのである。



『御主人様の命令……私の好きにしろ……』



 そしておっさんは思っていた。

 少なくとも、おっさんは意識を落とす前に宇宙人のことや人類のこと、赤ちゃんや子供な、地球……守るべき物のこと。

 そして、若い頃のこじらせや、やらかした事などに深く思いを馳せていた。



『わかりました、御主人様。 御主人様のために、御主人様の思いを、私が成してみせましょう。お任せください! その程度の事なら、十全に役目を果たせます!』



 奉仕種族として生み出された霊体は、初めて意思ある生命体に全力の奉仕を行うべく、おっさんの思いの丈をすべて受け止めた。

 同化した時点でおっさんのあらゆる過去のすべてが、奉仕種族には刻まれている。

 思い・感情・その機微。

 今現在から、おっさんが生まれた瞬間まで全てを遡ることが可能だったからだ。


『私が! 御主人様のために! 全力をお尽くし致します!』



 安アパートの窓から、再び謎の発光が満ちる。

 おっさんの体が浮き上がり、その下腹部あたりが発生源。


 キラキラとした、としか言いようのない謎の発光現象が数分続き、おっさんの服だけがすり抜けて、新たな身体が光の消失と共に現れた。



 あの草臥れたおっさんは 『変態』 したのだ。



 たるみ始めた皮膚は水を弾くほどにハリがあり、小じわは消えて、おっさんとは思えない小柄な体躯。

 少し毛髪の量が減って、荒れていた頭皮はみずみずしく、ブワっと風で靡けば艶がハッキリと乗っている栗色のロングヘアー。

 パッチリお目々に愛嬌ある笑顔。

 もちろん容姿は作り物のように美しい。


 手首にはオシャレ度だけしか考えていない可愛らしい白いボンボン。

 持っているのは鮮度が良いハリツヤすら残る冷凍マグロ。


 変態したおっさんは謎の宇宙霊体生物の全力奉仕によって、美しい少女と成ったのである。



「御主人様が願った姿、そして御主人様が望んだ力……」


 そう、かつておっさんは子供の頃に願い、望んだ。

 子供の頃からリピドーの強い時期まで患っていたと言える。


 魔法少女って良いなって。


 3人居た、当時の姉たちの影響である。


「そして御主人様は魔法少女になって、人類を守りたかった!」


 そうだ。おっさんは望んだ。

 まだ若いリビドーが溢れ出ていた頃、自分が世界の主役となって注目される妄想でニヤついていたのだ。

 謎の組織とか、なんかこう、悪の魔法少女とか、いろいろ大変なことが起きてそれを救ってあげることを。



「任せてください、御主人様! 私が全力で御主人様の願いを叶えて差し上げますから!」


 そして、奉仕種族はキッと空を見上げた。

 場所は奥多摩湖。


「はい! このコンデンスミルクが、人類を守ってみせます!」

 



 近未来2031年・東京西部。

 奥多摩郡から山梨にかけての山間の合間。


 謎の飛行物体と、真っ白な衣服に身を包んだ少女と思われる物が上空にて多数の人々に目撃される。

 マグロを振り回し、怪光線をお互いに放ちながら奥多摩湖の半分の水を蒸発させたとして、大きく世間を賑わせた。


 後日、奥多摩湖の端の方で半分に折れたマグロが発見された。




 翌日。




「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」




 意識を取り戻したおっさんは、真実を知って海老ぞりしながらベットの上で跳ねまわった。


――――――――――――――――――




★おっさん(主人公)

 10歳の子供の頃に魔法少女物のアニメ、少女漫画等コンテンツに触れて創作したオリキャラ(コンデンスミルク・魔法少女)を謎の宇宙人に顕現させられた。

 中小企業の一般事務員兼営業。


●奉仕種族

 超科学を持ったどこかの宇宙人(滅亡済み)が生み出した人工生命(霊体)

 外観は割烹着を着用した見た目、黒髪で15歳頃の少女。

 基本的にコンデンスミルクの時はおっさんと同期しているので容姿の設定は忘れて良い。


★魔法少女コンデンスミルク(主人公)

 おっさんが10歳のときに創作した魔法少女。奉仕機械の超技術によって設定すべてを完全再現。


名前:コンデンスミルク (テーブルに置いてあった調味料)

年齢:14歳

マグロ:最初の一本はサービス(お金は払う) 

必殺技:ハイパーパンチ(パンチ) 


身長150cm、体重40kg。 

握力 ゴリラ


決め台詞 このコンデンスミルクが、甘~い裁きを下してあげるんだからっ♡


 他多数項目を省略。

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