イハイちゃんは配信中!!
私犀ペナ
プロローグ
「ねぇ、あなたもあそこに倒れてる人たちの仲間?」
「い、いえ、ち、違いますっ」
「そう。じゃあなんで逃げないの? ここにいたらあいつらみたいになっちゃうよ?」
「に、逃げます!」
あ、そっか、足怪我してるから立てないのか。
怪我というか折れてるのか。
目の前の女の人は右足が大きく腫れている。
立とうとするけど、片足だと難しいみたい。
ちなみにここはどっか知らない倉庫の中。
配信のネタになるようなものないかなぁ、って夜中の街を歩いてたらさ、たまたまこの女の人が複数人の男の人に無理やり車に乗せられてるの見て面白そうだと思ったの。
「私、治癒魔法とか使えないからなぁ。お姉さん、スマホ持ってる?」
「え、あ、はい、持ってます……」
「じゃあ貸して」
「はい……」
私のこと怯えてるみたい。
手が物凄く震えてる。
まぁそうだよね。
数十人の男をこんなか弱い少女が一人でボコボコにしたからね。
でも、そんなに怖がらなくてもいいじゃん。
まるで化け物を見るみたいにさ。
「スマホロックかかってるよ」
「あ、ご、ごめんなさい」
お姉さんにスマホを渡すと、顔認証でロックを解除してから渡してくれた。
「ありがと。今から
「お、お願いします……」
私はお姉さんのスマホで秩序同盟に連絡した。スマホには緊急連絡の際に内蔵されてるGPSが発動する。その発信源を探知すればここがどこなのかすぐにわかる。
だから秩序同盟の人は私に今いる場所は聞かなかった。電話した時点でわかってるってこと。
ちなみに私のスマホは今は配信中だから、電話できない。
「はいどうぞ、すぐ来るそうだよ」
「ごめんなさい……」
「謝りすぎじゃない? っていうかこいつらなんだったんだろうね。お姉さんの知り合い?」
「ぜ、全然知らない人たちです……」
「あ、コメントになんか書いてあるよ。もしかしたら人身売買関係のやつかもしれないって、へー」
今現在、私の配信を見てるのは六千人ちょっと。
「とりあえず秩序同盟の人たちが来るまでここ居ようかなぁ」
『お姉さんを一人にしたら危険だよ』
『↑同意見』
『イハイちゃん強いね!』
『俺ならイハイちゃんに何回殴られてもイイ!』
『顔踏んで欲しいなぁ』
絶え間なく流れるコメントたち。
「私に会えたら踏みつけてあげるよ」
『え、まじ?』
『イハイちゃん可愛い!』
『なんて寛容な、天使かな』
『あの45歳童貞でふ。踏みつけてもらえますか?』
「童貞? 私そういうの興味ないから、別に踏んで欲しいなら踏んであげるよ」
コメント欄に投げ銭がたくさん入る。
「あ、もしかしたら秩序同盟の人たち来たかも。じゃあここら辺で配信切るねー、またねー」
停止ボタンを押して配信を終える。
「お姉さんもまたね。今度は気をつけなよ」
「あ、ありがとうございました。このご恩は必ず返します」
「そういうのいいから。私は好きでやっただけ、恩なんて感じなくてもいいよ」
誰かに感謝されたくてやってるわけじゃないからね。
とにかく暇なの。
人類の進化がどうのこうの言ってる変な組織を抜け出した。お陰で実験の毎日から解放されたけど、特にやることがないんだよね。
「またねお姉さん」
私は裏口から倉庫を出て、それからは……そうだ、ディアのとこに行こっと。
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