恐怖と混沌と君の死体

ヘビーなしっぽ

恐怖世界


「…ここにも、ないか」


一人の男が、半壊…どころかほぼ全壊した建物の中で、小さくそう呟いた。

男がいる場所は、鉄筋コンクリートのマンションなのだが、その建造物は、既にマンションとは呼び難い代物だった。

窓は、枠を残して全て吹き飛び、鉄筋コンクリートの鉄筋が飛び出て、あからさまに危険な風体を醸し出している場所は、いくらでもある。何よりそのマンション自体、建物の上半分が何かに喰われたかの様にバッサリと消え失せており、分厚い灰色の雲が浮かんでいる空が見えていた。


男は、マンションを全室検閲した後、マンションから出てきた。

男の顔は、灰と塵で汚れていた。

汗が体全体を服とをピッタリくっつけている。

男の左手には薬指の肉“だけ”なく、骨がびらびらと揺れている。


「君は一体…何処にいるんだ」


そんな小さな、うめき声の様な言葉を残して。


この世界は、恐怖と混沌に満ちている。秩序はない。

ただ全てのものが、無秩序に、死を物語っている。

陽光さえも、分厚く異色の雲に阻まれ、火山はマグマを天に噴き上げ、地がごうごうと音を建てて割れる。ハリケーン・カトリーナよりも強い風が巻き上がり、波がうなりを上げている。


元々、この世界はこんなではなかった。

自然が溢れる、緑豊かで、何一つ不自由ない世界。まさに、理想郷を体現したかの様な世界であった。

しかしいつのころか。この世界を支えていた“センター”と呼ばれる機械がエラーを吐き出した。

センターはたちまち動作不能に落ち入り、たちまりち世界は混沌に呑まれた。

過去の遺人たちが総力を結集させて作成したと言われているセンターは、現代人の科学力では復旧不可能と見なされた。

その上、センターの設計図は、遺人本人によって焼き払われており、もう一基、センターを作ることは叶わなかった。

そうこうしているうちにも、事態はは悪化の一途を辿っていた。

センターの動作不能に伴い、自然たちが自壊を始めたのだ。もちろんそれは、人間達が育てていた作物にも及んだ。世界はすぐに食糧危機に陥り、各地で食料を巡って戦争が行われた。

センターもついに自壊し、この世界に安寧の2文字を留めていたハシゴが消え去り、世界は彼らに牙を剥いた。

生物達も、センターの様にエラーを吐く様になり、異形と呼ぶに相応しい生物が地上を彷徨う様になった。

豚が炎を吐く様になったり。牛の乳が酸性の乳に変わってしまったり

人間が生き抜くには、これ以上ないほど不可能に等しく、人類はすぐにその繁栄と途絶えさせた。


そんな、恐怖ホラー混沌カオスに満ちた世界の中に、一人の男がいた。

この世に残った、最後の人類だ。

男は元々、食糧危機の際には、軍隊に所属していた。それは、短い期間であったが、男の体はそれ相応に筋肉質だった。

男はずっと、何かを探して彷徨っていた。

最後の人類が、一体何を探していると言うのだろう。

………答えを言おう。

それは、男がかつて愛した人の死体だ。


男は、既に自分が最後の人類だと言うことを、なんとなく知っていた。

男が死体を求めて彷徨う様になってから、半年ほど。男は死体の一つにすら出会ってこなかったのだから。


話は変わってしまうが、男の肩には、口径5.56mm、銃身長508mmのM16自動小銃が担ぎ上げられている。

右のふともものホルスターには、口径9mmのスミス&ウェッソンM&P。

左のふともものホルスターには9mm.45口径、銃身長112mmのSIG SAUER P220が黒光りしている。

男がM16自動小銃と共に背負っているリュックの端からは、口径12.7mm、銃身長12.7x

99mm弾モデル:837mmのツァスタバ M93 ブラック・アローが顔を見せている。

なぜ突然武器の話を出したかといえば、この世界の生物について説明するのに必要だったからだ。


男は今まで、様々な異形に出会してきた。

牙を大量に生やして、近くに行くと噛みついてくるカモメ。

甲羅からタールの様な液体を出すカメ。

跳躍力が10倍くらいに伸びているであろうウサギ。

タテガミが燃え盛る巨大なライオン。


基本的に、この世界の生物に弾丸は通用しない。唯一通用するのは、フルメタルジャケットの徹甲弾、もしくは、マシンガンかミニガンによる一点への連続攻撃のみ。カメなどの元々の防御力が高かった生物には、R.I.P弾でもダメージは少ない。

つまるところ、ほぼ詰みである。御愁傷様。


しかし、男は生きていた。

何のために? 知れたこと。

愛した人の死体を探すためだ。


今、男に 「なぜここまで生き延びられたか?」 と聞けば、恐らく男は、恋人のおかげだ。と答えるだろう。

言うなれば、愛の力。とか言うやつだ。



さて、そんな前置きは後に置いておこう。


男は今日も。狂った世界を恋人を求めて彷徨い続ける。

そんな世界を旅する物語に、貴方もご一緒願えるだろうか?

読者殿?Dear Readers?

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