夢の中の君へ

夜久らすく

なんでもいいや

 「ねえ、そろそろ起きてよ〜!」


 僕はそう呟きながら、君の髪をそっとなぞる。


 日曜日とはいえ、もう昼の一時だ。普段ならとっくに昼ご飯を食べ終えている時間。いつまで寝ているつもりなんだろう……そう思いながらも、僕自身もまだ君と同じ布団の中にいる。


 「今、何時?」


 半分だけ目を開けて、君が問いかけてくる。

 寝ぼけたその姿さえ、君らしくて愛おしい。


 「昼過ぎだよ。起きないの?」


 そう答えると、君はまた布団にくるまってしまった。


 「ああ、まだ夜か。大丈夫、大丈夫。もう少し寝かせて」


 寝ぼけすぎだ。

 夜でもないし、何が大丈夫なのかも分からない。

 今日は君と買い物―――つまりデートの約束をしていたはずだった。


 それなのに、この有り様だ。

 もう何度も見てきた光景で、そのたびに「何してるんだろう」なんてイライラしたこともあった。


 君の好きなドーナツを奢ってあげようかと思っていたのにやめておこうかな。なんて意地悪を言ってみたりもしたけれど、それでも君は起きない。


 ……それでも、結局許してしまうのが僕なんだ。


 午後からでも、いくらでも買い物はできる。

 週に二回しかない休みだ。

 たまには、こんな一日も悪くないだろう。

 そう思いながら、僕は再び布団を被った。


 それに、彼女の寝顔を見ていると、自然と笑顔になってしまう。

 たまに寝返りを打って、こちらに顔を向けてくれるところなんて、どうしようもなく愛おしい。


 僕はそんなことを思いながら、窓の向こうに広がる綺麗な青空を見上げて呟いた。


 「君が幸せなら、なんでもいいや」


 その声は誰にも届かないまま、今日の青空に吸い込まれていく。


 でも、夢の中の君には届いている気がした。


 だって、その言葉を口にした瞬間、君が少しだけニヤけたから。


 この、暖かくて幸せそうな顔を、できるだけ長く見ていたい。

 そう思って、もう少しだけ寝かせてあげることにした。


 僕はもう一度、そっと君の髪をなぞった―――

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