アウトロー・クレイドル ―パパと呼ぶには早すぎる―
@MIku2
第1話
その夜、私が手に入れたのは、冷たい鉄の感触と、一生消えない血の匂い。
そして、胸の奥からせり上がる、ひどく醜い吐き気だった。
――それから数年後。
「……うえっ、お、おえぇ……」
路地裏のゴミ溜めの横で、私はドレスの裾を汚しながら、胃の中にあるはずのないものを吐き出し続けていた。
今しがた、私の放った弾丸が男の肩を貫いた。
ただそれだけの事実が、私の脳を激しくかき乱す。
「……いつまでやってんだ、ガキ。警察が来るぞ」
頭上から降ってきたのは、ひどく無機質で、けれどどこか呆れたような男の声だった。
顔を上げると、そこにはよれよれのコートを着た、死神のような目をした男が立っていた。刑事の工藤だ。
「……む、無茶を言わないでくださいまし……。っ、死ぬかと思いましたわ、あんな至近距離で……っ」
「ハッ、あれだけ皿を投げ飛ばしておいてよく言うぜ。ほらよ」
工藤が私の前に放り投げたのは、コンビニのポリ袋だった。
中を覗くと、安っぽいシュガーの香りが鼻をくすぐる。
「……ドーナツ?」
「ああ。血の匂いを忘れたきゃ、砂糖を脳にぶち込め。それが一番の薬だ」
私は、震える手でその安物のドーナツを掴んだ。
一口かじると、暴力的なまでの甘さが口いっぱいに広がる。
これが、私と最低なパパの、最初の契約だった。
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