第27話 その先へ・・・
村田たちの“一踏ん張り”は以外にもあっけなく。簡単だった。
玄関口から月島達のいるフロアまでに、村田と冬也で仕留めたゾンビの数は3体。それもそれぞれ背後から頭を一刺しした程度であった。
・・・
ウィーン・・・
ロックが解除され。3人は研究室へと入った。
「村田先輩!無事で何よりです!」
「月島か?・・お前、大分老けたなぁ」
田辺くんよりも6つほど年上だっただろうか?・・村田には老けて見えた。
「食料もあんまりなくて、まともには食べれてないいんですよ」
月島の頬はこけ。以前よりも少し痩せているように見える。
「加藤!久しぶりだなぁ!元気だったか?」
奥から月島と同じく以前よりも元気がなくなったような、同僚の加藤が歩いてきた。
「元気なわけないだろう。お前はよく無事だったなーそれに奴らの対処も慣れているようだったし・・・色々あったんだな・・」
「ああ・・・色々とな・・・外はもうめちゃくちゃだ――」
「そうか・・まあ立ち話もなんだし奥で話そう」
「ああ・・」
3人は奥へと案内された。
・・・・
それぞれが席に着き、コーヒーで一息ついたところで自己紹介をした。月島は結衣が村田の妹だと知って少し驚いていた。
「そうだったんですか・・大変だったんですね――」
「ああ。実は俺たち以外にもう一人メンバーがいるんだ。彼はこのグループには欠かせない言わば要だ。だが諸事情で今は別行動をとっている。詳細はまた話すが、その彼のためにもあるものを求めて俺たちはここに来た」
「中和剤ですね?言わなくても大体分かります。こんな世の中ですから――その彼は感染してしまったんですね?」
「ああ、おそらくな」
「おそらく?どういうことですか?まだ転化していないんですか?」
「転化はしていない。だが何らかの症状は出ている。俺はそれがこの一連の騒動と同じものだと考えている。調べてみないことには何とも言えないが、俺の考えでは感染から転化に至るまでにはいくつかの段階があり、彼の場合はまだ第一段階。手の施しようはあるだろう。そしてこれは俺たちが外で直接目にして思った事なんだが、奴らは転化後もまだ背徴しているように思う」
「成長ですか?――」
「ああ。そいつは他のゾンビもよりも明らかに秀でた能力を持っていた。動きは俊敏で力も桁違いだった。鋭利な爪を持ったゾンビもいるという話も聞いた。そしてこの成長だが、俺の予想ではまだ先があるように思う」
「・・・村田はどうなると考えてるんだ?」
頭を抱えながら加藤は尋ねた。
「まだ分からない。すべてのゾンビがなり得るのか?それとも特殊な例だったのか・・・どちらにしろこの先奴らに遭遇しない保証はない。策は考えた方がいいだろう。だがまずはワクチンだ。これがおそらく最も困難な作業だろう」
「へっ・・聞くんじゃなかったな――事態がそこまで深刻だとは思わなかった。あいつら程度なら何とか出来たんだ。俺たちでもな、だが奴らは群れると手が付けられなかった。結局俺たちはここに籠ることを選んだ。その時はまだ食料もあったしな、だがそんな奴までいるとなると・・・もうどうしていいのか・・・」
加藤にとって村田の話は受け入れがたいものだった。
「初めは俺たちもどうにかワクチンを作れないかと研究室に籠ってやってはみたんだ。だが思ったよりも、いや・・思った通りか、上手くいかなくてな。今じゃこのありさまだ」
「先輩・・・はっきり言ってワクチンは無理です。出来たとしても何年かかるか分かりません。それよりも別の方法を考えた方が良いと僕は思います」
ガタッ!――
その時、冬也が立ち上がった。
「黙って聞いてりゃーできないだの、聞きたくなかっただの。てめえらさっきから弱音ばっかりじゃねえかよ!少しは根性みせろよ!それでも科学者かよ?!」
「冬也さんでしたっけ?――根性じゃどうにもならないんですよ。科学というものは」
「冬也、少し落ち着けまだ無理だと決まったわけじゃない」
「落ち着いてられっかよ!どんな思いでここに来たと思ってんだ?!お前らは外の世界を見てねえからそんな簡単に諦められんだ!そうだろ村田?世の中がこうなったのはついこないだの話だ。でも人は大勢死んでる。外はまるでゴーストタウン。その現状を見ねえでよくもそんなことが言えたもんだぜ!根性じゃどうにもならねえだと?お前らは一度でもここから抜け出そうと思ったか?」
「冬也落ち着いてよ。私たちは自分たちでどうにかしなきゃ生きられなかった。だって外にいたんだもん。でもこの人たちは違う。この騒動が始まった時からこの安全な場所にいた。それだけの違いだよ。それにそんなこと言うためにここに来たんじゃないでしょ?田辺くんを助けるために来たんでしょ?」
普段無口な結衣が急に口を開いたことに冬也は言葉を詰まらせた。
「結衣。それが無理だって言ってんだぞ?それでもいいのか?」
「まだそうと決まったわけじゃないよ」
ガチャッ!――
その時、部屋にメガネをかけた若い女性は入ってきた。
その女性は部屋に入って来るなり、無言でコップに入れたてのコーヒーを注ぎ、そして、ソファーに座った村田を見るなり固まった表情を見せた。
「む・・村田先・・どうしてここに村田先輩がいるのよ月島?!」
「やっと出てきたと思ったら、うるさい奴だなーそれと先輩をつけろよ先輩を」
「永井か?久しぶりだな――」
「久しぶりじゃないですよ村田先輩――研究所には顔出さないし」
「無視かよ――」
話の腰を折られた冬也は溜め息をつくしかなかった。
「今、今後の方針について話してたんだ。俺たちはワクチンを求めてここに来た。永井、お前にも協力してもらいたい」
「そんなことより今までどうしてたんですか?――先輩よく生きてましたねぇ。外は化け物だらけなのに、噛まれたりしてませんか?」
「噛まれてたらここにはいないだろう?」
「ハッハッ!冗談ですよ・・そうですか・・ワクチンですか・・無理だと思いますよ」
永井の一言に場の空気が余計に静まり返った。
「チッ!どいつも同じ事言いやがって」
「どこに行く気だ冬也?」
「トイレだよ!」
冬也は席を立ち上がりそのまま部屋を出て行った。
「何ですかあの頭の悪そうな人は?村田先輩のお友達ですか?」
「お前は気にしなくていい。それよりどういうことだ?無理というのは。月島に聞いたがお前は今まで研究室に籠っていたそうじゃないか?何も遊んでいたわけじゃないだろう?」
「そのままの意味ですよ。それよりも奴らの習性なんかを調べた方がこの先、役に立つんじゃないかと思いますが・・・」
永井は村田も認めるほど優秀だった。この話し方が鼻につく。
「・・・そうか」
だからこそ、永井の結論が意味するものが何なのかも分かっている。
――やはり無理なのだ。いや、無理とは断言できないが、いつかは自分たちがこの先どう行動していくのかを決めなくてはいけない。その答え出す材料として永井の言葉は大きな影響力を持つ。
「俺たちはこの感染の被害がどのくらいまで広がっているのかを知らない。だからこそ最悪の状況を俺は想定して行動してきた。ワクチン制作はその内の一つだ。だがそれが“難しい”となると別の方法を考える必要がある」
「どういうことお兄ちゃん?研究はやめるってこと?」
「そうじゃない。どちらにしろ俺たちの研究者としての能力は役に立つ。それをどう生かすかだ」
「分かります。分かりますよ村田先輩。面白くなりそうですねー」
ふんふんと笑みを浮かべながら大きく頷く永井。
「仮にランナーと呼称しよう。奴の動きは速く、力も強い――俺はそれに対応できるだけの能力が欲しい」
沈黙していた加藤が何かを理解したように「丸ほど」と頷いた。
「どちらにしろまずは感染した死体が必要だ」
「それなら、私の研究室に1匹ありますよ――解剖したものが」
「永井お前・・そんなことまでしてたのか?」
月島は引いたように永井を見た。
「当り前じゃないですか!死体がなきゃ何もできませんよ!ロビーで横たわっていたのを持ってきたんです。もちろん頭はグサッとやっておきましたよ」
「お前・・いつのま・・」
「一々驚くな月島、永井は前からこういう奴だ。誰よりも手を付けるのが早い。まあランナーの死体があればベストだが、それでも十分だ。ここから始めよう」
「それでお兄ちゃんどうするの?」
「――新薬を開発する」
「どうせなら強力なものにしましょう!先輩――」
永井は何とも晴れやかな表情だった。
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