手のかかる可愛いアイリス
パ・ラー・アブラハティ
これはね私の大事な親友の話なのよ。
いつも私の後ろをついて回ってくる手のかかる可愛いアイリス。困ったことがあればすぐに私に泣きついて助けてって。
小等部魔法学校の時、杖を無くして泣いていた姿は昨日のように鮮明なの。マンドラゴラの採取授業では鳴き声が聞くのが怖いから鳴き声を聞かせないで!なんて困ったお願いをしてきて、本当にいつもいつも手のかかって可愛くて仕方なかったのよ。
大袈裟だ、って貴方は笑うかもしれないけど私にとって太陽のような存在で、眩しくて、星みたいで、手の届かない存在なの。
だから、貴方が困った顔をしていたらつい助けちゃうし、なにか求められたら出来ないことでも出来ることにしちゃって助けようって思えるの。
でも、私は貴方の小さな歪みにずっと気づけなかった。ずっと、ずっと、助けてって言っていたはずの歪みに目を向けれなかった。いつも横にいたはずなのに。
ごめんなさい、アイリス。私が貴方を理想としすぎたせいで貴方を孤独にさせていた。
貴方がこんな世界なくなればいいと口に出すまで、ずっと私は貴方がそんな人だと思っていなかった。
自分勝手だって分かっている。醜いのは私だって分かっている。
でも、貴方と過ごした思い出達は今も燦然と輝いて、鳴り響いているの。
「だからね、アイリス。私は貴方を止めるの」
最悪の魔女と呼ばれた貴方に希望の魔法使いと呼ばれる私は杖を向ける。
暗くて、重くて、滲んでいて、息ができないぐらいに貴方の本当の気持ちは重たい。
私には荷が重すぎるかもしれない。けれどね、私は貴方が好きなの。最悪の魔女なんて呼ばれ方してるけど、私にとってはたった一人のかけがえのない親友。
この杖の矛先が貴方に向いているのは、私への罪。貴方は悪くないのよ、アイリス。
だからね、世界を少しだけ許してあげて。
「やっぱり、リンちゃんは強いなあ……いつも勝てないや」
「アイリス、私は強くなんかないのよ」
「嘘だあ、じゃなかったら私負けないよ」
か細く途絶えてしまいそうなアイリスの鈴の音のような声。冷たくなっていく手は私の頬に。
朗らかに頬を緩ませて笑う貴方をどうして人々は最悪の魔女なんて呼ぶのだろう。ここにいるのは可愛らしい一人の少女なのよ。
「ねえ、リンちゃん……ごめんね。最後まで迷惑をかけて」
「いいのよ、慣れっこになってしまったから」
「私のせいだあ」
「アイリス。貴方と過ごした日々を私は忘れないわ」
「私もずっーと、ずっーと覚えてるよ。だからね、元気に生きて……」
命の灯火が消えゆる瞬間、するりとアイリスの手は私の頬を滑る。
あぁ――あぁ――嫌よ。私まだ貴女と居たい。この痛い気持ちが消えてしまうまで一緒にいて欲しいのよ。
マンドラゴラを取りに行きましょ、魔法の勉強をしましょう、おやつも沢山作るわよ。
だから――私の名前を呼んでよ、アイリス。
「本当……貴方はどこまでも手のかかる可愛い子ね」
手のかかる可愛いアイリス パ・ラー・アブラハティ @ra-yu482
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