第8話 初めてのライバル
朝の光が街に差し込み、
アイラは窓辺で身支度を整えていた。
長剣を背中に背負い、
探索者カードを手に取る。
「今日は……少し、
挑戦してみよう」
昨日の配信で、
視聴者は四十人を超えた。
嬉しい反面、
次への緊張も生まれる。
ギルドに向かう道すがら、
街の人々の声が耳に入る。
いつもと変わらぬ日常だが、
胸の奥がざわつくのを感じる。
ギルドに到着すると、
掲示板には新たな依頼が貼られていた。
中規模ダンジョン。
危険度は中。
報酬は前回より少し高めだ。
「……よし、これにしよう」
カードを提出して許可を受け、
ダンジョン入口に向かう。
地下への階段。
薄暗い通路。
足元は湿っており、
踏むたびに水滴が跳ねる。
胸元の端末を確認し、
配信を開始する。
「こんにちは、探索者のアイラです」
視聴者は昨日よりも増え、
五十人を超えていた。
「見てくれてありがとうございます」
通路を進むと、
小型の魔物が現れる。
スライムとゴブリンの混合型。
素早く、攻撃パターンは複雑。
「……慎重に」
一歩下がり、距離を取りながら観察する。
隙を見て斬撃を入れる。
――コメント:
「落ち着いてる!」
――コメント:
「初心者なのに凄い」
胸の奥が、じんわり温かくなる。
進むにつれて、通路は二手に分かれた。
右は狭く、暗い。
左は広く、明るい。
「……どっちに行こう」
配信画面に向かって説明する。
「右は危険ですが、魔物が少ないです。
左は戦いやすいですが、数が多いです」
――コメント:
「左にしろ!」
――コメント:
「右はやめろ」
「じゃあ、左にします」
剣を握り直し、慎重に一歩踏み出す。
広い通路には、ゴブリン二体。
一体は盾を装備、もう一体は棍棒。
「……少し強い」
間合いを取りながら観察する。
突進してくるゴブリンを受け流し、
横から斬りつける。
――コメント:
「焦らないで!」
――コメント:
「ナイス判断」
一体ずつ倒し、通路の奥へ進む。
すると、暗がりから光が差し、
人影が見えた。
「……誰?」
剣を握り直す。
目の前に立つのは、
同じ年頃の少女探索者だった。
長剣を背負い、軽装鎧。
短く切り揃えた髪。
鋭い眼差し。
「あなたも配信してる?」
アイラは少し驚いた。
画面からも見える存在。
同じ視聴者に映る可能性がある。
「……はい、そうです」
「私はライラ。
初めて会うわね」
胸の奥が、わずかに高鳴る。
初めてのライバルかもしれない。
二人は視線を交わし、
無言の緊張が通路に流れる。
突然、ゴブリンが飛びかかる。
二人同時に剣を抜き、
連携するかのように斬る。
魔物が倒れ、静寂が戻る。
ライラが、
少し笑みを浮かべる。
「……うまいじゃない」
「ありがとう」
互いの目に、
挑戦と好奇心が宿る。
通路の奥で、
新たな影が揺れる。
大型の魔物。
ゴブリンよりも一回り大きく、
鋭い牙が光る。
「……一緒にやる?」
ライラが提案する。
アイラは少し考え、
うなずいた。
「……うん、やろう」
二人は距離を保ちつつ、
大型ゴブリンに立ち向かう。
一撃、受け流し、斬る。
次の一撃を誘い、
また斬る。
――コメント:
「二人組か!」
――コメント:
「見応えある!」
息を合わせ、ゴブリンを倒す。
視聴者数は七十人に増え、
コメントが次々流れる。
「……すごい」
胸が高鳴る。
初めて、同じくらい強い相手と
戦い、協力できた。
ダンジョンを抜ける頃には、
二人の探索者は少し打ち解け、
互いに笑みを交わした。
一方、ギルド長室。
男は配信画面を見つめる。
娘と同じ年頃の少女が、
共に戦っている様子。
「……ライバルか」
低く呟く声。
警戒と期待が混ざる。
これから、
ダンジョンに新たな波紋が広がることを、
父は静かに予感していた。
こうして、
小さな剣士アイラの世界に、
初めてのライバルが現れ、
物語は新たな局面を迎えた。
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