怖い話をしてあげる

独白

今から怖い話をしますね。


苦手な方は、そっと画面を閉じて下さい。





いえ。


別に驚かせるつもりはありません。


恐ろしい怪物も血塗れの幽霊も出て来ません。







ただ、睡眠時間は減ってしまうかもしれませんね。







類像現象って分かりますか?


シュミラクラ現象って呼ばれてたりします。





天井のシミが人の顔に見えたりするっていうやつです。




人間って案外単純なんです。


「何も無い」に耐えられないんです。




だから、そこに勝手に顔を描いて


名前を付けて


意味を与えるんです。






「かもしれない」を植え付ければ、人は勝手に怯えるんです。



お化けがいる「かもしれない」


悪い事が起こる「かもしれない」



そんな単純な事を意識させるだけで、簡単に行動を制御出来てしまうんです。






例えば、今あなたに怖い画像を見せたら、トイレに行くのを我慢させて、お風呂に入るのをやめさせる事だって出来る。





実際は、そんな面倒な事をしなくても、もっと簡単に人を縛る事が可能なんです。








空き地の近くを通った時に、赤い鳥居の絵が書いてあるのを見た事ありませんか?



たったそれ一つで、あなたはそこにゴミを捨てないし、立ち小便もしなくなる。




ね?


簡単で安上がりでしょう?




人の行動は簡単に制御出来る。





あなたはもう既に誰かに制御されてるんです。






信じられませんか?



それじゃあ、試してみましょう。






あなたは車の運転をしますか?




車の多い交差点や、見通しの良い直線道路のガードレールの下に、花束があるのを想像して下さい。










どうです?



少しスピードを緩めたんじゃありませんか?




変ですよね。


そこにあるのはただの花束なのに、あなたは何故ブレーキを踏んだんでしょう?






それは、あなたがその場所と花束に「事故」というラベルを貼ったからですよ。



あるかどうかも分からない事故の事実を、花束を見ただけで脳内で捏造してしまうからです。






物事というものは、見た人間の解釈次第で喜劇にもホラーにもなる。



そして、見た情報から事実を勝手に作り上げて、想像上の魔物に怯え始める。




怯えてしまえはあとは簡単。



今度は記憶を揺らすだけ。






思い出して下さい。



そのぬいぐるみは、本当にその位置に置きましたか?



その写真に写っているのは、本当にあなたの友人や家族だけですか?



あなたの恋人や奥さんや旦那さんは、本当にそんな笑い方でしたか?



ガスの元栓は閉まっていますか?



あなたの後ろの方は、お知り合いですか?










ほら、不安になったでしょう?



最後は少しベタでしたが、以外と効果的だったでしょう?






ね?



そういう事です。



あなたの行動を好き勝手に誘導するのは、コツさえ掴めば簡単なんです。






そういう風に考えると、自分が信じられなくなってきませんか?


自分の意思でやっているはずの事が、無意識に誰かに誘導されている。



 





まだ信用出来ませんか?




別に、それはそれで構わないんですけどね。







ただ、あなたはこの話を聞いてしまった。






忘れない限りは、必ず意識に残ってしまう。



それで充分です。








今晩あなたが眠る時、天井のシミやベッドの下が気にならないと良いですね。






ね?



怖いでしょう?




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