第15話 シンデレラガール



 「よかったじゃない、レイラ、ドンはご機嫌。それも飛び切りのよ」


 ルイーザも、興奮している。


 レイラとドンの話の後。 


 完全にぶっとんで自分の星の啓示インスピレーションの世界に没入したドンを置いて、ルイーザは自分専用の部屋へレイラを連れていった。


 ルイーザは、もともとデザイナー志望。ドンの1番弟子である。しかし容姿抜群であったことからモデルもやりなさいと勧められ、今ではドン・ハルキサワ事務所のデザイナー兼トップモデルとして、活躍している。


 ドンの信頼篤い女性である。多くのモデルと違って、自分の専用ルームを持っているのもそのためである。


 「レイラの活躍で、私も鼻高々よ。あなたを見たとき、これは他のモデルの子とは何かが違う、ピンと来たの。それでいきなり大舞台ステージに立ってもらったんだけど、まさかこんな活躍をしてくれるとはね」


 他の子とは何かが違う、そう言われてビクっとなるレイラ。潜入捜査中の刑事。それは絶対にバレてはいけない。やっぱり何か妙なオーラ出しちゃってたのかな。気をつけよう。


 もちろんルイーザは、レイラを宇宙警察の人間だと疑っているわけではなくて。


 「聞いて、ドンはあなたのことがすっかりお気に入りなの。星の啓示インスピレーションっていってたでしょ。これはつまり、ドンがあなたを見て、何か新しい作品の図像イメージをつかんだ、そういうことなの。あの興奮トランス状態からするとね、すごい大作の予感がする。ドンは、ああなったら、もう止まらないんだから」


 瞳をキラキラさせるルイーザ。


 「そう……なんですか。私も何が何だかよくわからなくて。でも、よかったです。ドンのお役に立てて」


 ぎこちない笑顔のレイラ。あくまでも、ぽっと出の女の子を演じる。


 ドンの興奮高揚。


 自分のショーが事件騒動で注目された、それだけじゃなくて。

 

 あのドタバタで、星の啓示インスピレーションとやらが降ってきた、閃いた、そういうことなんだ。なぜ襲撃捕物がファッションの星の啓示インスピレーションにつながるのか? それはレイラには全く不明不可解理解不能だが、何しろ凡人の世界とは違うのだ。いろいろあるのだろう。


 「もう、レイラ、自信を持って!」


 自分こそ自信満々のルイーザ。


 「次の新作、モデルのエースは、あなたなのよ」


 「は?」


 何を言ってるんだろう? レイラは固まるが、ルイーザは、さらに押してくる。


 「ドンの様子を見ていればわかる。ドンはあなたから、星の啓示インスピレーションを受けたんだもの。もう間違いなく。新作のイメージは、あなたね」


 うわあ。


 レイラは、頭がクラクラする。なんだか凄いことになっている!


 ルイーザ、レイラの肩を叩く。


 「やったわね。レイラ、あなた本当に素敵よ。今までどこにいたの。間違いなく一流のモデルになれる。最初見た時から、思ったの。もう、見るからに宝石の原石ね。磨けば、とびっきり光るわ。いきなり最高のデビュー。あなたは間違いなく下着モデル界のシンデレラガールよ。でも、あなたを見出したのは私だからね。それは忘れないでね」


 ルイーザは、いずれファッション業界の総合プロデューサーのポジションを狙っているのだ。人材の発掘育成売り出しに、とにかく熱心なのだ。自分が見つけたレイラの売り出しに自分の野心を乗せて、やる気満々というわけだ。


 宇宙警察では冷静沈着で知られた刑事レイラだったが。


 頭がぐるぐる回る。


 どうしよう。


 シンデレラガール? 下着モデルとしては、ありえない成功ができそう。


 考えもしなかった夢の扉。


 ドンの星の啓示インスピレーションとやらが爆発し、ルイーザが太鼓判を押してくれる。


 トップモデルになれる? 私が宝石の原石?


 それってひょっとしてもしかして。刑事を辞めて、下着モデルに転身したほうがいいってこと?


 ああ、もう!


 私、何を考えてるんだ!



 今、潜入捜査中なんだから!



 ◇



 華やかな下着モデルの世界に身を置いて。


 レイラの潜入捜査は続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る