第2話 下着モデルのオーディション



 レイラは、ドン・ハルキサワの事務所の下着モデルオーディションに応募した。


 失踪し行方不明になったナミエを探す。


 そのためには、事務所に潜り込まなければならない。


 調べると、この事務所は、頻繁にモデルのオーディションをやっていた。応募したレイラに、すぐにデータ審査合格の通知が来た。


 よし、順調。


 いよいよ事務所に行くのだ。


 「ここからだな」


 レイラ、気を引き締める。


 下着ファッション界。下着モデル界。


 自分には未知の世界だ。全く関係ないと思っていた。もちろん女の子だから、ファッションやお洒落には関心があるし、ここシン・トーキョー星が宇宙に名高い下着メーカーとそのファッションショーの星であることも承知していた。ショーの時期には、周りのみんながその話題でもちきりになる。


 「でも、まさか、私が下着モデルを目指すだなんて」


 いや、これは潜入捜査なのだ。人1人の運命、もしかしたら命が関わっているかもしれないのだ。


 ファッションだおしゃれだと浮かれに行くのではない。


 レイラ、きりっと顔を整えて、ドン・ハルキサワ事務所へ入っていく。



 オーディション会場には、大勢の女の子が詰めかけていた。


 宇宙中から、集まっているんだ。


 「すごいな。なんだか世界が違う。レベルが違う、それにこの熱気」


 警察期待のエリート刑事も、気後れする。


 オーディション会場。美貌とプロポーションを誇る子が多い。容姿だけでなく、自分をアピールしようと装いに力が入っている。みんなメイクもバッチリ。磨きをかけにかけている。すでにしてファッションショー状態だ。


 「まずいな」


 ファッション界の事情を知らないレイラは、オーディションだから生の自分を見せればいいんだろうと、いつもの地味な刑事のメイクできていた。


 それと。さらに問題なのは。


 みんな、自身の下着を用意してきている。思いっきりアピールするための。


 「どうしよう!」


 焦るレイラ。 


 オーディションで自分の姿体ルックスを披露するにあたり、レイラが持参した衣装は水着。ビキニである。 


 モデルの募集要項に、オーディションでは、自前の下着が水着を持参するようにと書いてあったのである。姿体ルックスをきちんと見てもらえればいいんだからと、レイラは、ついつい水着を持ってきてしまった。

 

 なんだかんだ人前で下着姿になることに、ためらいがあったのである。


 「そんなこといってちゃいけなかったんだ! オーディションに合格しなきゃ、潜入捜査にならないのに。私、何やってるんだ!」


 オーディションの参加者。みんな、年頃の少女たちだ。ばっちりメイクも下着も決めて、全力アピール。おしゃれやファッションがとにかく好きで、モデルになりたいのだ。熱意。それが、ひしひしと伝わってくる。みんな自分の下着で決めている中で、水着はレイラ1人だけ。


 「下着モデルオーディションなのに、水着だなんて。やる気ないと思われるな。こりゃ、負けたかも」


 レイラは、意気消沈。


 このオーディションが第一の関門。ここを突破しなければ、何もできないのに。



 オーディションが始まった。


 参加者がずらっと並び、1人ずつ前に出て、自己アピールする。いたって、普通のオーディションだ。レベルは段違いに高いけど。


 レイラは。


 ここに全てを賭けていたのだが、


 「わ、わたし、レイラです。下着モデルに憧れていて……ど、どうしても、な、なりたいです!」


 完全にガタガタだった。刑事としてなら、どんな悪党の前に立っても決してたじろいだりはしないのに。初めて立ったキラキラの場所。


 あれこれ考える余裕もなかった。

 

 あっさりと、あっという間に、オーディションは終わった。


 オーディションの審査員席に。ドン・ハルキサワの姿を認めることができた。やや背は低く、金髪の長髪。もちろん、近づくことも、言葉を交わすこともできなかった。


 オーディションが終わり、みんな、ぞろぞろと更衣室に行き、着替え、事務所を後にする。


 帰り道。


 不合格だろう。レイラは思った。ダメだ。とても無理だ。いろいろ甘かったのだ。


 潜入捜査。別の方法を考えなきゃ。


 その時。


 携帯端末パッドに、通知がきた。 


 「なんだろう?」


 チェックするレイラ。


 「え?」


 目が丸くなる。


 通知は、ドン・ハルキサワ事務所からだった。


 合格、と書いてあった。


 『おめでとうございます。レイラ様、あなたは当事務所の下着モデルとして合格しました』



 やった。 


 信じられなかった。でも、事実だった。合格。


 レイラは、頭が真っ白になった。


 ともあれ。


 踏み込めたのだ。


 すぐ事務所に来るようにと、言ってきている。よし、行こう。


 潜入捜査第1段階成功。


 下着モデルの世界に。


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