第2話 ズレた女子、女子アナを真似る

 社会人1年目のOL生活(当時は世間に馴染んていた呼び名)の時の事。

あまりの仕事のできなさに打ちひしがれ、同僚が、コツコツ信頼を得て行き、上級レベルで人脈づくりに精を出す姿に内心非常に焦りながら「私は私よ」と淡々にすましていた風にしていた。実際は、相当焦っているのがよく態度に漏れていたと思うが…。

なんとも居辛かったが、でも今の状況を何とかしなければ。 毎朝ニュースで見る、ニコニコ顔でおじさんゲストに可愛がられている彼女たち。これだ。

アナウンサーの、好感度の高い服装、笑顔、滑舌のよい喋り。これを取り入れることから始めてはどうか。形から入ったっていいじゃないか。

というわけで、大学の落研の同級生がアナウンススクールに通っていたのを思い出し、どんな内容を習ったか、など彼にリサーチをしてから早速同じスクールに申し込む。

9万ちょっとだったと思う。初回のスクールへ顔を出すと、本気でアナウンサーを目指す方、朗読がうまくなりたい方など様々な動機を持った方々が顔を連ねていた。

藁をもつかむ思いで、講師のアナウンサーの話を真剣に聞く。

話の中でも印象に残ったのは、鼻濁音。

「がぎぐげご」を発音するときに、音の前に「ん」を付けて発すると柔らかくなる、軽部さんがモノマネされていたアレである。表記すると、「か」にマルをつけた「か。」である。

毎朝発声練習を始めた。腹をへこませ、「はっ、はっ、はっ」とのどをあける練習。

「あー」と、声を続く限り発声を続ける。これが綺麗な喋りの準備運動らしい。

習ったことを、出勤の車の中で、早速実行する。

事前にあたためたアナウンサー的発声を、早速朝礼で披露する。

「今日の処理件数は〇件です『か。』」

発音とともに、毎朝ニュースで見る女子アナの表情をコピーしてみんなの前で披露した。そんなことを続けていると、定期面談の時に、「最近あなた変わったね。そんな事をいうのが1人だけじゃあないんだよ」と上司から言われた。

すぐに調子にのるたちなので、「これは間違いじゃあなかったんだ」と勘違いしてしまい、朝礼の番を待ちわびて「んか。」「んか。」と「好かれる女子社員」の型を作りに行った。

聴衆の前での目線の配り方は、満遍なく左右を見渡す、と習ったそのままを実践していると、ふと部のお局様と目が合った。

そのカオには、「なに格好をつけているの」と、意地悪を向けてくるように笑っていた。

その瞬間、積みあげた自信が雪崩を起こした。ガラガラガラ…しゅん。

一番肝心の、改善すべき点である仕事でのミスの多さ。ここの克服には至らなかった。

ただ、このアナウンサー的発声、学校の役員では役立っている。

新入生保護者の前で挨拶する場面があり、「アナウンサー」な私を全面に押し出した。

脇に待機していた同じ役員ママさんたちからは「すごーーーい!いつものあなたとは違うわね」とキャーキャー騒がれた。ただ、私が帰った後、いつぞの局みたく「ねえ、聞いた?あの喋り方」と茶化されていた可能性も、ある。

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