🧸🌙ユミコちゃん【お題フェス11 手】💫🪆
夏乃緒玻璃
🧸☀️🪆🌙💫
ユミコちゃんは、近所に住んでいた小さな女の子だ。
僕よりも一つ下で、よく一緒に遊んだ。
男の子みたいに髪を短くしていて、お転婆な癖に、お母さんに買ってもらった人形を大事にいつも持ち歩いていた。
小学校に上がる頃になると、小さい癖にすっかり彼女気取りで、僕が他の女の子と遊んでるとよく妨害した。
同級生の女の子と話をしているだけで、後ろからタックルしてきたり、真横で大声で音痴な歌を歌ったり。
鬱陶しいと思った事は何度もある。
ユミコちゃんは、僕にくっついてくる癖に、僕が好きな本の話をしても「本キライ」と言って話を合わせない。
不器用な僕よりゲームが上手くて、対戦ゲームでは容赦なく僕をボコボコにし、指差してゲラゲラ笑った。
僕が小学校3年の春。
家庭の事情で引っ越す事になった。
突然の事すぎて、クラスのお別れ会すら出来なかった。
引越しのトラックが横付けしていた。
ユミコちゃんは一言「いなくなっちゃうんだ」と言ったきり、黙り込んでいた。
僕は、いらなくなった、いや、持って行くなと言われた古い本や、玩具を箱に入れてユミコちゃんにあげた。
お菓子を溢して汚くしてしまった本は捨てようと思ったが、なんとなく自分では捨てがたく、一緒に箱に入れた。
どうせ本を読まないユミコちゃんが捨てるだろう。
やはり本人は「本イラナイ」というので、ユミコちゃんのママに箱を渡した。
ユミコちゃんママは、いつもユミコと遊んでくれてありがとうね、元気でね、と言いつつ、僕に大きな鰹節と冷えていないジュースをくれた。
「あんまり急だったから、家の中探しても何もなくて。あーもう、こんな物しかないけど持って行って」
ユミコちゃんよりユミコちゃんママの方が悲しそうだった。
僕は使い方も知らない鰹節とぬるいバヤリースオレンジジュースをカバンに入れ「それじゃね」とユミコちゃんに手を振った。
ユミコちゃんは怖い顔をしながら、テッテッと駆け寄ってきて、僕の顔を見た。
「いっちゃうんだ」
僕はただ頷いた。
何も気の利いた事を言えず、ただ黙って手を振った。
ユミコちゃんが手を掴んだ。
汚い人形が、僕の手に押し付けられた。
僕は驚いて彼女を見た。
ユミコちゃんは僕の手を掴んだまま、言った。
「もうユミコは守ってあげられないから、あげる」
🧸🌙ユミコちゃん【お題フェス11 手】💫🪆 夏乃緒玻璃 @NATU2025
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