天矛盾

藤照瀬

第1話


小学校の頃まではオカルト。超常現象や宇宙人のことをもしかしたら存在するんじゃないかと疑っていた。だけど、歳を取るにつれその考えも自然となくなっていき、夜一人で眠ることも怖くなくなっていた。俺はなにか大事な気持ちを忘れてしまったようなどこか浮かない気分になって学校生活が少し憂鬱だった。


「なあ、いつも死んだような目をしてる人間を見ていると人間、どうなるかわかる?」


時雨川高校一年、俺の同級生である良純彩人がそんなことを呟いた。俺は当然こう答える。


「知らん」


いつもの口癖だ。


「正解は、そいつも同じ目に変わるだよ。光里、僕の気持ちを考えろ」


彩人は俺、上奏院光里の名前を呼んだ。とてつもなく失礼な発言だったけど、反論ができなくて口を閉じた。


「なあ、いい加減目覚めよう光里。僕がお前が輝く青春を送るのを手伝うからさ」


「なんだよ、輝く青春って」


「アレだよ」


彩人は教室の後方脇を顎で示した。そこにはこのクラスでもカーストトップともいえる一つのグループがあった。そこでは男子が二人、女子が三人。とりとめのない団欒を交わしている。


「あんな感じで明るい雰囲気醸し出して、常に友人と切磋琢磨し合う。最高の環境だよ?」


どこが最高だよ。わかってて言ってる当たり彩人の皮肉が効いていた。


「俺は今の環境で満足してる。友達ならいるだろ、彩人が」


「俺のことを友達として認めてくれるのは嬉しい。けど、他にもっと友達を増やそう」


友達を増やしても特に良いことを感じたことがない。確かに小学生の頃は俺もスポーツマンと言った感じで友人に囲まれた学生生活を送っていたが、中学になると皆少し落ち着いて自然と友人が減った。別にそのことに対して思うことはない。あのときの友人を恨んでいるわけでもない。ただ、俺は一人の楽しさを知ったのだ。


「友達ねえ……ならメリットを教えてくれよ。本当に今の俺に友達が必要かどうか確かめる」


「そうだなあ……弁当を一人で食べなくて済む、時々友達をパシリに使える、女子の情報を集められる、とかね」


どれも俺には必要がない。特に恋愛にまったく興味がない俺には最後のは特にいらなかった。


「彩人、お前の友達の定義は何だ?」


「なんでそんなことを聞くんだよ」


「なんか冷めてるから。本気で友達だと思っている相手、実は少ないんじゃないか?」


「……正解。そこを突かれたら僕もなにも言えなくなっちゃうじゃないか」


つまり彩人も友達は少なく、現実主義。こちら側の人間であると言うこと。さっきまでの助言はなんだったのか。なんて素晴らしいことか。

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天矛盾 藤照瀬 @fujiriu

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