幻想が現実の世界で

紗々宮 シノ

プロローグ

 二一七〇年。

 事務職、運転、掃除、料理……。様々な業種や技能のAI化が進んだ社会。人類はさらなる新しい進化を求め研究、開発を進めていた。

 世界中の人々はAIが普及し出した二十一世紀の頃よりも効率的な生活を送っていた。

 しかしそんな生活がいつまでも続く訳もなく、とある事件が起きた。最終的な被害から考えると、事件ではなく災害と表現した方が正しいと言えよう。

 ある研究室で開発中のAIが何らかの誤作動を引き起こし、一部の学者が実在するであろうと推測していた〈平行世界〉へ繋がる〈門〉ゲートが開き、この世界と繋がった。そしてそれは一つだけでなく、世界中で幾つも観測された。

 〈門〉ゲートからこちらの世界に侵入して来たものは当時の、いや現在の技術力を以ってしてでも細部まで理解できない兵器だった。各国は保有しているあらゆる戦力を投入し、この兵器を何とか撃破することに成功した。しかし被害は甚大で、都市一つが滅んだところもあれば、物理的に国が半壊したところもあった。

 科学者たちは、この災害――後にカタストロフィと呼称することになった――の元凶たる兵器をこの世界にもたらした〈平行世界〉を神々の怒りに触れたという意を込めて〈アースガルド〉と呼んだ。

 〈アースガルド〉は人々を苦しめた元凶として畏怖の対象と、人々から恐れられていた。しかしながら、〈アースガルド〉からこの世界にもたらされたものは数多くあった。

 この世界の兵器によって残骸となった〈アースガルド〉から来た兵器を基に様々な技術の進化を遂げ、生活力や軍事力などがカタストロフィが起こる以前よりも向上した。

 そして最も大きかったものは、今まで漫画や小説の中でしか存在しなかった異能。

 〈アースガルド〉から〈門〉ゲートを介し、〈エレジー〉と呼ばれる未知の物質が人間の体内に入ることにより、人間は死ぬまで使われることがなかった脳細胞を使えるようになった。そしてその拡張された脳の一部を主として使い〈エレジー〉を使うことで、人類に能力――異能を与えた。

 その異能は〈幻想〉と呼ばれ、思いの力すなわち、思念力が引き金となり〈エレジー〉が活性化する。活性化した〈エレジー〉は人間という概念の枠組みを超え、世界という概念に干渉することによって人間の中のイメージがこの世界に具現化し、思念力の大きさや重さによってその度合いが決まる。これはときとして、この世界に存在するあらゆる法則を捻じ曲げ、超越する。

 〈幻想〉は人それぞれ違い、十人十色、千差万別、多種多様。そして、〈幻想〉は一人一種類だけしか持っておらず、使えない者も多くいる。


 これは、そんな世界の物語。

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