アルケミストはVRで星を編む
空色
第1話 見放された男
「ハァ...ハァ...!」
がさりがさりと草木をかき分け、森の中を何かから逃げるように男が走る。
「くそ...なんでだよ!なんだって俺ばっかり...!ぐぁっ!?」
飛来したナイフが腿に刺さり、痛みと衝撃にその場で転倒した。
「アハ、捕まえた♪今日は頑張った方だね?」
森の暗闇から現れた少女が悦に浸るように言葉を紡ぎながら、男にナイフを突きつける。
「か、勘弁してくれませんか?」
「だめ♡」
サクリとあまりにもあっけなく男の喉元にナイフが刺さる。
すると男の体はパラパラと崩れ、光の粒になり霧散した。
「...今日もレア物いっぱい、どこで拾ってくるんだろ?」
男を殺害した少女は、散らばった男の遺品を拾い集め満足気に去っていった。
「ハッ!?」
「ハッじゃねぇよ、授業中に寝るな幸谷!」
ガバッと体を起こした直後、俺こと
「あいたた...んー?なんか変な夢見てた気が...」
「夢じゃなくて教科書と黒板を見なさい」
教室の色んなところよりくすくすと笑い声が聞こえ、何事も無かったように授業が進み、あっという間に放課後になった。
手早く荷物をまとめ、忘れ物確認ヨシ!連絡事項ナシ、ヨシ!
気分はクラウチング!ダッシュ帰宅!
ガラリと教室の扉を開けると、同時に反対側の扉を開いて俺と同じように生徒が飛び出してくる。
あれは...げ、委員長...慌ててスピードダウン、ダッシュから早歩きにシフトチェンジ、走るなって説教されてる時間はないのだ!
...ってあれ?なんか委員長も早歩きしてる?
「委員長もなんか用事で急いでるん?珍しくない?」
「う、うん...その、親戚が家に来るらしくて...!」
いつも冷静!真面目ちゃん!って感じの委員長が今日はなんだか焦ってる...?というかなんか今すごい目が泳いでた気がする。
「へぇ...提案なんすけど、内緒にするから走らない?」
「.......だめだよ!」
「だいぶ悩んだな...」
廊下を渡り、階段を降り、下駄箱で靴を履き替え、昇降口を出る。
そしてダッシュ!風だ、俺は風になった!
もはや追いつけるものなど...ヌウッ!?
ちらりと横目に見ると委員長が並走していた。
体育とかじゃないのに走ってる委員長珍しいですね?
「かなり急いでるみたいだな委員長?」
「う、うん、幸谷君こそ」
校庭をでて通学路を走る。
しばらく真っ直ぐ進み、十字路までやってきた。
「委員長、俺こっちだから」
「私はこっち」
「「じゃ、また明日!」」
俺達は別れの挨拶と同時に十字路の左右に散開、それぞれの自宅へ急いだ。
「ただいまー!」
玄関を開け、しっかり鍵を施錠して、自室に走る!
...返事が返ってこないのは家族仲が悪い訳じゃないぞ?
昨日から1ヶ月間、両親は離れた所に住んでいる姉の元に行っている。
子供が産まれるからその補助をするんだとか、めでたいね。
高校生で戸籍上おじさんになる俺だけど、急いで帰ってきたのには理由がある。
ずっっっっっと楽しみに待っていたゲームが、今日正式リリースされるのだ、
いやぁ長かった、発表されてから小出しにされる情報でワクワクする日々、そして先月行われたベータテスト...俺は参加出来なかったんだけどな。
...楽しみにしてたのに参加しなかったのかだって?
俺だって参加したかったさ!なのに俺の体ってやつは夏なのにインフルエンザなんてものにかかりやがった!!天は俺を見放したのだ!!
治るまで大人しくしていろとのことでゲーム機は没収され、当然外出も不可、あの時は絶望したもんだ。
しかし俺はその時アイデアという雷に撃たれた。
これからベータテストに参加した奴らがあれこれ世界に情報を流すだろう、俺はそれを尽く見ない!完全初見プレイこそ純粋に楽しめるだろう、と。
というわけで俺は一切の情報を取り入れていない。
既にソフトはダウンロード済み、更新データがないことも確認済み、今、俺の冒険は幕を開けるのだ...!
VRゲーム機を起動させて頭にすっぽりと被る。
いざ、『Star Light Stellar』の世界へ...!
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