S&L

たっちぃ

Slot.1 邂逅

今よりも少しだけ未来の、でも少しだけ違う世界。

そんな世で某県のとある街、剣をふるう青年がいた。彼の名は終刃 剣(おわりば つるぎ)。今日も彼は祖父の開いた護身剣術道場にて剣技を磨く。ただし、生徒としてではなく教師としてだ。彼の技術はすでに道場を任せられる程度には到達していた。

「そこで踏み込みの強さをもう少し弱くしてみて。そう!それで次の動きに入りやすくなったでしょ。」

この世界では特殊な臓器による自・他者間への細胞を書き換えるエネルギーが生み出されており、それを悪用する者たちもいる。そんな輩に対処するために日本では銃刀法を廃止し「地域武装行使許可法」を制定した。この法律によって資格を得た者は街中での能力行使と刃物の帯刀、使用が認可された。剣もその一人である。護身剣術を広めることで資格を持たない者たちでも自身の安全を保障できるように彼の祖父はこの道場を開いたのだ。

「それじゃあ今日はここまで、また来週も頑張ろうね!」

そう明るく子供たちに問いかける剣。彼はいつも笑顔で生徒に大人気だ。その効果もあってかこの道場の経営もうなぎ上りらしい。





「せんせいばいばーい」

最後の子供が手を振って帰るのを見送ったあと、剣も道場の掃除をしようと後ろを振り返った。そのとき

「あの、ここで剣を教えてもらえるのここであってますか?」

気弱に問いかける一人の青年。彼の名は畏原電(いはら でん)。

「そうだけど今日はもう終わっちゃたんだ。また来週の13時ごろに来てよ。」

そう明るく答える剣。

「いえ、あの、護身ではなくて・・・自分を強くするための剣が知りたいんです・・・」

目を伏せがちにそう問いかける電。その問いかけに剣が一瞬笑顔を消した。もし電がそれを見たらこの道場に近づくことは二度となかっただろう。それほどまでに剣の目は鋭かった。

「・・・できないこともないけど、まともな鍛錬じゃないし。そもそも何のために強くなりたいんだい?」

また笑顔に戻って優しく問いかける剣。それに対して電ははっきりと答えた。

「弱い自分を変えたいんです!自分だけじゃなくて誰かを守れる人間になりたいんです!」その眼には確かに信念が宿っていた。それを聞いて剣は

「そういうことなら無視できないなぁ。いいよ、毎日この時間においでそしたら特別授業をしよう。」

そうして剣は電に握手の手を差し伸べた。電もそれを握ろうと手を上げようとしたとき。

「たのもー!」電の後ろで声を上げる青年がいた。彼の名前は空木疾風(うつぎ はやて)。

「あんたが終刃流剣術の師範か?あんまり強くなさそうだな。」

そうぶっきらぼうに言い放つ疾風。

「今どき道場破りなんて....あ、君が疾風君か!知り合いが言ってたよ。とても強い無資格の子供がいるってね。君のことだろう。」

無頼な道場破りにも明るく答える剣。こんな無法者に対しても彼は笑顔をやめない。

「相手してもいいんだけど、今日は少し疲れてるから....そうだ電君、彼と戦ってみなよ」

唐突に言い放つ剣に電も疾風も狼狽と抗議の声を上げた。

「無理ですよ!僕剣すら握ったことないのに!...それに能力も大したものじゃないから。」

「ふざけんなよ!こんな素人相手にしたって意味ないだろ!なめてんのか!」

そんな二人に対し

「大丈夫、見たところ君はある程度鍛えてるようだから剣を持つ段階までは保証するよ。それに能力の強弱なんて関係ないさ。要は使い方なんだ。」

すこし背伸びして電の肩越しに疾風に答える

「君も結構鍛錬をつんでるようだねぇ。もし電君に勝てたら僕が相手しよう。」

そう簡単に言い放つと、剣は道場の中へ向かっていった。戸惑いながらもそれに続く二人。歩きながら二人は会話する

「おまえ、負けるのが決まってるからって手は抜くなよ。俺は本気でやりあって勝ちたいからな。」

「う、うん。わかったよ。出来るかわからないけど、できる限りのことはするよ...。」







そうして道場に入った三人。剣が練習用の木刀を二人に手渡し、言う。

「先に相手に一発当てた方が勝ちというルールにしよう。あぁそれから、電君が買ったら疾風君、君も入門しない?」

疾風は鼻で笑って答える。

「ありえないことを約束するのもおかしな話だが、まぁいいぜ。ただし、俺が勝てばアンタと俺、マジの真剣に勝負をしろよ。」

剣は答える。

「オッケー、オッケー。それじゃ電君に少しだけアドバイスを送ろう。それぐらいはいいよね、彼は初めて試合をするんだし。」

「まぁ、それぐらいはな。それどころか2対1とか言い出すかと思ってたぜ」

疾風は笑いながら、素振りを始める。

それを見て電は

「やっぱり無理ですよ、先生。素人目でもあの素振りだけで彼が熟練者だってわかります。全く目で追えないです...」

ますます弱気になる電に剣は問いかける。

「そういえば君の能力を聞いてなかったね、どんな能力だい?」

「電気です。でも静電気みたいに一瞬ピリッとするだけで大した威力は出ないんです。それに、こんなこと言うのべきじゃないんですけど、剣を持つ前から疲労感がひどくて。緊張しているのかもしれません...」

それを聞くと剣は言った。

「君は十分彼に勝てる潜在性があるじゃないか!今の話を聞いて分かったよ。こういう感覚で能力を使ってみて…そう...」

二人の話し合う姿を横目に疾風は考えていた。

(確かにあいつの攻撃は当たらないだろうな、だが油断はしない。あんな奴でも何を隠し玉にしているかがわからない以上先手必勝だ。)

そして話し合ってから5分が過ぎたころ。

「それじゃそろそろ始めようか。」

そして二人は5メートルほど離れて向き合う。

(俺はガチで行くぜ。誰が相手でもな。)

(先生の言ったこと本当にうまくいくかな...いや今はそれしか方法がないんだやるしかない!)

「始め!」剣がそう言い放った瞬間、疾風はすでに電の1メートルほど前までにいた。彼の能力は「風」。風を起こして自在に操るというもの。

(追い風を生み出して懐に入り込んでやった。素人相手に本気で能力行使して悪いが、俺は強い奴と戦いたいんでな)

彼が木刀を振り上げる。

「もらった!」

疾風が言い放った瞬間。電の体が少し横にずれた。それによって疾風の木刀は空を裂く。

「なんだと!」

そして振り終わりの瞬間、疾風が困惑した隙に電が軽く小突く。

”トンッ”

「勝負あり!電君の勝ちだね。疾風君も確かに強かったね。能力の使い方もうまい。見たところ風を生み出す力かな?君も指導のし甲斐がありそうで楽しみだなぁ。」笑顔を崩さぬままそう答える剣。

「はぁはぁ...勝てた...本当に...」

息を切らしながら電はぽつりと言う。木刀を持つ腕がだらりと下がり、力なく刀を手放してしまったせいで地面に落としてしまう。

「クソ!なんでだ。確かに当たったと思ったのに!」

疾風は乱暴に地面をこぶしで叩きながら言った。

確かに疾風の刀は素早かった。だが、それを電は見切ってよけたのだ。剣が彼にしたアドバイスとは以下のことだ。

「君、もしかしてずっと放電してるんじゃない?だから常に疲れてるんだ。自分を電子機器だと思って、それに蓄電するイメージはどうだい?こういう感覚で能力を使ってみて。それからただ電気を外部に流すんじゃなくて自分の目に流し込む風に使ってみよう。そう、そんな感じ。」

つまり、自身の視神経や筋肉にに電気を流すことで一時的な身体能力の向上を図ったのだ。

「約束通り君も入門だね!いやぁ、これからが楽しみだ!」

なんとも満足そうに話す剣に疾風は不満げながらも

「クソ。まさか素人相手に負けるなんて....しかたねぇ、決めちまったことだからな。それにアンタは俺の何倍も強いに違いない。ならここにいれば俺の強さもいつかはアンタに追いつけるはずだ。」と答える。

「そういえば、先生は何の能力をもっているんですか?」

電が疑問を口にする。

「僕かい?「目」だよ。目がすごくいいんだ。ただそれだけさ」笑いながら剣は答える。

これは剣聖(ロード・セイバー)を目指す青年と、弱さを克服する少年と、強さを渇望する少年の物語である....



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