第15話「願いが灯る町・宵篝(よいかがり)」

 日が沈んでも、

 町は暗くならなかった。


 道の両脇に並ぶのは、

 背の低い篝火。


 赤く、

 揺らめきながら、

 人の顔を照らしている。


レオン:「……白陽とは、

     また違うな」


 軽く笑い、

 周囲を見渡す。


ミリア:「ここは――

     願いが灯る町・宵篝」


ミリア:「灯は、

     人が焚くもの」


ミリア:「だから……

     消えにくい」


 商人の声。

 占い師の鈴。

 誰かの祈り。


 それらが、

 夜気に溶けている。


セリア:「……良くない空気です」


 低く言う。


カイ:「白陽より?」


セリア:「ええ」


セリア:「ここは、

     神に祈らない」


セリア:「人が、

     自分のために

     願う町です」


 その言葉の直後。


 通りの奥で、

 篝火が――消えた。


ミリア:「……え?」


 一本、

 また一本。


 火が消える。


 そして。


 闇の中から、

 それが現れた。


 人の形。


 だが、

 顔は歪み、

 身体には無数の手。


 胸の奥で、

 赤い火が、

 脈打っている。


ミリア:「……なに、あれ」


セリア:「……願燃(がんねん)」


セリア:「人の願いが、

     燃え尽きず、

     形を持ったもの」


レオン:「……初めまして、

     って顔じゃねえな」


 願燃が、

 一歩進む。


 近くの人の篝火が、

 一気に消えた。


 代わりに、

 怪異の胸の火が、

 大きくなる。


ミリア:「……放っておけない!」


 前に出る。


 その瞬間。


 胸の奥が、

 熱くなる。


???:「……その願い、

     お前のものか」


ミリア:(……声?)


 光が、

 溢れ出す。


 今までより、

 確かに強い。


 願燃を包み、

 火を――鎮めた。


 怪異は、

 抵抗せず、

 静かに崩れ落ちた。


 残ったのは、

 冷えた灰だけ。


 町に、

 火が戻る。


カイ:「……今の」


カイ:「完全に、

    偶然じゃないな」


ミリア:「……うん」


 胸に手を当てる。


ミリア:「でも……

     怖くは、ない」


 セリアは、

 確信したように、

 頷いた。


セリア:「……神は、

     もう、

     目を覚ましています」


 願いが灯る町・宵篝。


 その火は、

 人を温める。


 同時に――

 歪みも、生む。

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