手とテ|短編小説

KEMMY|けみー

手とテ

夕暮れ時のタワマンの一室。

電気のついてない廊下。

外ではでカラスが鳴いてる。


鍋がカタカタという音と、味噌汁の香り。

薄暗いキッチンに二人。


ーージャー


水道の水がシンクに流れる音がする。


「そうそう、水つけて」


「いや、もうちょっと濡らして」


「そうそう、いい感じ」


「あとはお米を手にとって。

 ちょっと多いかな……

 まあいいか」


「あとはそれを優しく握るの」


「そうそう……

 あっこぼれてる……」


「うん。

 三角になるように。

 優しく」


「いい感じ」


「よくできたね!」


「手に塩のせて、

 それで軽くもう一回握って」


「ふふ……

 懐かしい……

 あの時もこんな感じに教えたね……」


「……

 馬鹿みたい……

 何やってるんだろ私……」


「あの子のAIロボットなんて買って……

 結局やりたかったのって……

 仕事ばっかりで……

 なんでもっと構ってあげなかったんだろ……」


「ママ……

 コレデイイ?」


「うん‥…

 おにぎり……

 ママこんなに食べれないなぁ……」


お皿には、2個の不揃いなおにぎりと2個のきれいなおにぎり。


「これ……

 もっと早く見たかったなぁ……」

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