【キャラ挿絵あり、R15修正版】俺の妹が色欲の魔女だった件~
苦痛の仮面
屋敷の十年
第1話 転生
「君はもう、死んでいる」
感情のかけらも感じさせない女の声が、俺の意識の底に落ちてきた。
「そうか……やっぱりそうなるよな」
俺は苦笑した。その声には、どこか解放感すら混じっている。
「覚悟はしていたさ……病室のベッドの上で、最後の生命力が吸い取られていくのを感じていたからな……」
「来る日も来る日も、自分の命をすり減らした結果でしょう?」
女の声が再び響く。
「夜を昼のように酷使したのは、お前自身の選択ではないのか?」
「徹夜だって?ハッ!」
俺は思わず冷笑を漏らした。積もり積もった怨念が、一気に噴出する。
「あのクソ会社のせいだろ!終わらない会議、永遠に完成しない企画書、オフィスの明かりは夜空の星より明るいときたもんだ!それにあの吐き気を催す上司、退勤一分前に新しい仕事を押し付けてきやがる!」
「給料のためじゃなけりゃ、誰が好き好んでゼンマイ仕掛けの部品みたいに、壊れるまで昼夜ぶっ通しで働き続けるもんか!」
「死を前にして、未練も、悲しみすら感じないのか?」女の声はあくまで平坦で、まるで些細な事実を述べているかのようだった。
「死んじまったんだ……今さらそんな感情を持ったところで、何になる?」
俺は強がってそう言ったが、震えと悲痛な響きを抑えることはできなかった。
脳裏には、生前の光景が走馬灯のように駆け巡る。ああ、未練がないわけがない……。
この死のような静寂の中で、もはや存在しないはずの心臓の音が聞こえる気がした。
長い沈黙の後、俺は再び口を開いた。その声は、滑稽さと戸惑いに満ちていた。
「まったく不思議なもんだな……俺は確かに死んだはずなのに、意識はこんなにもはっきりしている。それどころか……姿形も見えない存在とこうして会話までしているなんて。」
「一番気味が悪いのは、俺がそれをあまりにもあっさりと受け入れちまってることだ。まるで、これが当たり前かのように……」
「ならば」
女の声が、俺の独り言を静かに遮った。
「もう一度、生きたいと願うか?」
しかし、俺の中に期待していたような高揚感はなく、代わりにどっと疲れが押し寄せてきた。
「もういいよ、死んだままにしてくれ。骨の髄まで搾り取られるような社畜生活なんざ、もううんざりだ」
「本気か?」
女の声がわずかに上ずった。まるで俺の言葉を値踏みしているかのように。
「そうだな……もし生まれ変われるなら、超絶イケメンになって、毎日数え切れないほどの美女に囲まれて、想像しうる限りのエッチなことをやり尽くす人生がいいな」
「あ、それと、一生使いきれないほどの金を持ってる、国を傾けるほどの大富豪の家に生まれることだ。それなら、まあ……考えてやってもいい」
「いいだろう」
女の返答は、信じられないほど軽快だった。その軽い口調には、微かな悪戯っぽささえ混じっているように聞こえた。
その予想外の承諾を消化する間もなく、全てを飲み込んでいた漆黒の闇が、強烈な光によって切り裂かれた。
反射的に目を閉じた俺が、恐る恐る再び瞼を開けると――そこには、息を呑むほど美しい顔が、何の前触れもなく俺の視界に飛び込んできた。
アメジストのように透き通った瞳が、言葉にできないほどの興奮を湛えて、俺をじっと見つめている。
次の瞬間、柔らかく温かい腕に抱き寄せられ、甘い芳香が俺の五感を包み込んだ。
突然の親密さに妙な照れくささを感じ、何か言おうと口を開いたが、喉から出たのは「オギャア」という弱々しい鳴き声だけだった。まるで赤子の泣き声のようだ。
驚愕して自分の手を持ち上げると、目に映ったのは、白くてむちむちとした小さな手だった。五本の短い指は、まだうまく握ることさえできない。
その瞬間、戦慄が走った――俺は本当に、生まれたばかりの赤ん坊になっている。
本当に……転生してしまったのだ!
そして確信した。目の前にいる、窒息するほど美しいこの女性こそが、俺の母親なのだと。
目は嘘をつかない。その瞳の奥には、言葉では形容しがたい慈愛の光が満ち溢れている。それは純粋な、母親だけが持つ眼差しだった。
彼女は何事かを低く呟き続けている。しかし、その言葉は一言も理解できず、俺が生まれ変わった場所が馴染み深い日本ではないことを予感させた。
思考が渦巻く中、微かな足音が近づいてきた。同じく若い女性が、静かに俺の「母親」のそばへと歩み寄る。
彼女は仕立ての良い、クラシックな黒と白のメイド服を身に纏っていた。長いスカート、純白のエプロン、そして繊細なヘッドドレス。細部に至るまで完璧だ。
その容姿もかなり整っており、俺の母ほどの衝撃的な美貌ではないにせよ、清楚な、独特の魅力を放っている。
コスプレ?
いや、違う!出産直後のこの厳粛な場に、メイド服なんてあまりにも場違いすぎる。
俺の常識では、そんな服装はメイド喫茶か、同人即売会か、あるいは個人的な夜のプレイくらいでしかお目にかかれないはずだ……。
待てよ……まさか、ここではこの服装が……極めて「普通」なのか?
常識を覆すような考えが、雷のように脳内を駆け巡った。
もしかして、俺は日本でも地球上のどこかでもなく……伝説の「異世界」に転生したのか?!
俺の頭は一瞬にして前代未聞の混乱に陥った。しかし、目の前で繰り広げられる光景は、無慈悲にもその信じがたい結論へと俺を突き動かす。
そのメイドは、謙虚と呼べるほど恭しい態度で、俺の母に深くお辞儀をしたのだ。その端正で優雅な所作は、あまりにも自然で流れるようであり、演技の痕跡など微塵も感じられない。
彼女は正真正銘、本物のメイドなのだ。
この瞬間、全ての空想、推測、そして疑念が凝縮され、一つの揺るぎない事実となった。
つまり、前世では平凡な社畜だった俺が、本当に異世界に転生してしまったということだ!
(本作は『ノクターンノベルズ』にも掲載しております。 カクヨム版は、より多くの方に物語を楽しんでいただけるよう、過激な性描写をカット・修正した「R15向け修正版」となります。物語の核心やエッチシーンを無修正で楽しみたい方は、お手数ですが『ノクターンノベルズ』版をご確認いただけますと幸いです。)
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