完成しない旗の下で
柳生雪華
第0話 登場国・登場人物
登場国
アルトリウス王国
アルトリウス王国は、地図の上では小国である。
それ以上の説明は、戦争においては不要だった。
王国は大陸中央部の内陸国家で、三方を山脈と寒冷な高原に囲まれ、残る一方を平原として開いている。
この平原こそが、古くから「侵攻路」として名を持つ場所であり、同時に王国の穀倉地帯でもあった。
守るために開き、開いたがゆえに守れなかった土地である。
政治体制は世襲王政。
国王は存在するが、戦時において彼の言葉はほとんど意味を持たない。
王国を実際に動かしているのは、参謀本部と官僚機構、そしてそれを支える「忠誠」という名の慣習だった。
アルトリウス王国の軍隊は、規律正しく、訓練されている。
だが規模は小さく、動員可能人口にも限界がある。
王国軍の将校教育は徹底しており、
「国家のために戦うこと」
それ自体を疑問として扱わない人材を、丁寧に育ててきた。
アルトリウス王国は、正義を語らない。
語らなくても戦ってきたからだ。
そして語らないまま、敗北に向かっていた。
ノルデン民主連邦
ノルデン民主連邦は、自らを「歴史の当然の帰結」と呼ぶ国家である。
連邦は広大で、人口はアルトリウス王国の数十倍に達する。
工業地帯、資源地帯、農業地帯を内部に抱え、戦争を継続するための理由と手段を同時に持っている。
この国家にとって、戦争は非常事態ではなく、政策の一形態にすぎない。
政治体制は議会制民主主義。
ノルデン連邦は、この戦争を
「専制国家からの解放」
「遅れた王政体制の是正」
「大陸の安定化」
という言葉で説明した。
説明は常に整っている。
数値と統計、歴史的事例、国際法上の正当性。
どれもが正確で、反論の余地がなく、だからこそ空虚だった。
軍事力は圧倒的である。
戦車、航空機、長距離砲兵、補給線。
連邦軍は「負けない戦争」を設計し、それを実行できる規模を持っていた。
ノルデン連邦の兵士たちは、
自分たちが正義の側にいると教えられている。
そしてその教育は、ほとんどの場合、成果を上げている。
ノルデン民主連邦は、正義を語る。
語ることで前進し、語ることで破壊する。
語ること自体が、彼らの武器だった。
登場人物
エーリヒ・ヴァルデン少佐
(Erich Walden)
アウレリウス王国軍 将校
男性
参謀型、理論と責任を引き受ける側
「国のために戦う」という信念を疑わない
正義を嘲笑するが、声高に否定しない。
リーゼ・クロイツ少佐
(Liese Kreuz)
アウレリウス王国軍 将校
女性
主人公と同期で同階級
冷酷・即断
最初から「終わり」を計算に入れている
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