あの記憶
高校一年生。ひとクラス40人の生徒。
僕はその教室内で3年間、リーダーシップを取り続けた。
それは僕がこの教室の中で一番優れた人間だったからだ。
この教室は僕を中心に回っている。
この教室で僕は特別な人間なのだ。
クラスの誰もが、僕を讃え、感謝を口にし、僕に従った。
◆
部活動だってそうだった。
僕はバレーの全国大会に出た経験がある。
『君は学校の誇りだ』そう校長先生もおっしゃてくれた。
この学校のバレー部を強くせねば。
だから部員にも厳しい練習を課せた。
練習中に足を骨折する生徒もいた。
『無理です』耐えるんだ。
『もうやめて下さい』泣き言を言うんじゃない。
仕方ないだろう。
強くなるためなのだから。
僕は正しい。
嫌ならお前が部活を辞めればいい!
◆
恋愛だってそうだ。
誰を好きになってどんな関係を築くかを自分で選ぶのは当然の権利だ。
大好きな女子がいた。
その子は僕に従順だった。
僕の言う事なら、どんな事でも聞いてくれた。
僕が目を向ければ、その子は恥ずかしげに目を逸らして俯くこともあった。
照れくさいのか、唇を噛み締めながら小さく震えている時もあった
真剣な顔をして僕を視詰め、時に涙を浮かべることもあった。
好きな人間を特別に贔屓する。
それが悪いことなどであるものか。
◆
クラスが2年生になった頃。
クラスの中に裏切り者が出た。
『あんた頭おかしいよ!』
そう悪様に僕を罵ったんだ!
僕はそいつが許せなかった。
だから拳を振るった。
殴ったのだ。力一杯に。
体格は僕の方が圧倒的に優っている。
僕を罵ったそいつは床に這い蹲り泣きながら鼻血を流す。
人間同士、怒ることも喧嘩することもある。
この程度の諍いぐらいは当たり前だろう。
◆
僕は特別だ。
それだけのことを僕は成してきた。
クラスに、学校に、部活に貢献してきた。
だから少しぐらい特別扱いしてくれるのは当然だ。
◆
クラスが3年生になった頃。
一人の女子が自殺した。
それは僕が大好きだった女の子だ。
2年間、ずっと付き合っていたのに。
残念だ。一体何が辛かったのだろうか。
◆
39人になったクラスが卒業を迎える頃。
クラスの皆が、僕の方を向かなくなった。
僕が教室に入ると、誰もが黙り、誰からも笑顔が消える。
皆、横を向き僕から目を逸らし、そっぽを向く。
あれほど僕は君らに尽くしてきたのに。
これじゃあ、虐めじゃないのか。
こんな理不尽があってたまるものか!
どれほど僕が君達の世話してやったのか。
『ありがとうございました』ぐらい言えないのか。
そんな不条理が許されてなるものか!
◆
なんとか卒業式を迎えられたが…
以降、僕の人生は最悪だった。
「だからあの卒業生どもがどれ程不条理に死のうとも僕はなんとも思わない」
「あの卒業生どもが僕に何をしたかを考えればそれは至極当然なのだから!」
それは、生の喜びが明日の希望に変わる、そんな瞬間だった。
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