【物置】即興単文
淡瀬かがみ
お題:破壊のあと×食べ物
視界が開けていた。四角い青空は広々とし、針葉樹のように乱立するビルも全て、延々と連なる小山に成り果てていた。
かろうじて姿を残した自分の家は、あと一押しあれば脆く崩れ去ってしまいそうで、私は避難所へ向かっていた。
同じく、震災より命からがら逃げてきた人々の合間で、私は腹をさすっていた。泣き叫ぶ子供の声も、普段ならば眉をひそめはしただろうが、当然の叫びだった。
腹が減った。こんな時でも、昼になればぐぅと腹が鳴る。時計も役目を果たせないこの状況で、腹時計だけは機能している。老若男女、気持ちは一つであろうが、炊き出しも量が決められている。誰もが据わった瞳で、避難所のブルーシートに座していた。
私はそろりと避難所を抜け出して、自宅へ向かった。未だ余震は続いている。一際大きいものが来たら、今度こそ命はないかもしれない。けれど、そのリスクを背負ってでも求めているものがある。
チョコレートだ。とっておきの──というわけではない。つい昨日、特売のチラシに誘われるままに買った、なんの変哲もない板チョコだった。陶磁器の破片にまみれてはいたが、無事見つけ出した時の喜びときたら!
たまらず、包み紙に手をかける。剥がす手間すら惜しい。ぱきり、と小気味良い音を立てたチョコレートは、銀紙のぴりりとした苦みがあった。
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