マッチングアプリで出会った相手...プリウスとベルの話

みさき

第1章:日常のひび割れ

二十歳の大学生、一真は、父・健一と母・良枝との三人で、東京郊外の落ち着いた住宅街で暮らしていた。平凡で、何の変哲もない家庭。父は真面目なサラリーマン、母はパート勤めの主婦。一真は地元の大学に通い、コンビニでアルバイトをしていた。彼の世界は、大学の講義、バイト、自室でのゲームや鉄道模型の収集で構成され、恋愛経験は乏しかった。


その日常に、最初の小さなひびが入ったのは、親友の隆からの話だった。居酒屋でグラスを傾けながら、隆は得意げに語った。


「でさ、彼女、実は三十半ばで、結婚してるんだよ。子供も二人いるって。最初は罪悪感もあったけど…もう、たまんねえよ。経験豊富だし、尽くしてくれるし。男ってのは、年上の女に甘やかされるのが一番だよな」


隆の話は、刺激的で、どこか卑猥で、一真の胸に妙な焦りを灯した。羨ましい。自分にはない「大人の経験」を、友人は楽しんでいる。自分も二十歳、立派な大人だ。なのに、未だに恋愛といえば、片思いか、うまくいかない付き合いばかり。隆の話は、彼の心に潜んでいた「何か違うことをしてみたい」という欲望に、ぴたりと合致した。

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