改訂新版 ペース・ブレイカー 草薙 雅のマラソン物語
ハイヒール オオイシ
第一話 シンデレラの就職
カラカラカラっとコンテナに乗ったウインナーがローラーの上を滑る音が鳴り響く。
草薙 雅は蒸し暑いウインナー工場で、ふらふらしながら仕事をしていた。
草薙 雅は高校を卒業してすぐに株式会社 静岡ヘルシーウインナーに就職した。
昭和五十八年。
第二次オイルショックの影はまだ消えていなかったが、街では新しい車の話題が増え始めていた。
ニッスン自動車はターボ付きの車を出し、トーヨーダ自動車はツインカム仕様を売りにしていた。
それが、後にバブル景気と呼ばれる時代の前触れだった。
二週間前。高校の就職相談室で担任教師と三年生の生徒が個別の相談会を行っていた。時は二月中旬、大半の生徒は進学か就職が決まっていた。就職相談室を見回すと、何故か、普段見かけない保健室によくある白い衝立(ついたて)が設置されていた。
「就職はしたい。でも、マラソンもとことんやってみたいんです」
たったそれだけの条件が、壁となった。雅の希望にかなう就職先は、全く見つからなかった。
「どこか、ありますかね……?」
嘆く雅に、担任の教師は身を乗り出して言った。
「お前の陸上の成績を活かして、実業団に入るって道もある」
「実業団って、何ですか?」
「簡単に言えば、会社に所属して走る選手だ。純粋なプロじゃないが、企業の名前を背負ってレースに出る。成績次第じゃ、オリンピックを狙う連中もいる走り続けても、給料は出る。まあ……条件付きのプロ、みたいなものだな」
「先生。私のインターハイがどんな結果だったか、よく知ってるでしょ?」
「三十五キロのシンデレラ」
「またそんな言い方をして……。こんな私を、どこの誰が採用してくれるっていうんですか」
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