キラギラ・キライン
外レ籤あみだ
運命的キライ
僕はそのときとても腹が立っていた。
なんで腹が立っているかといえば、わけを話すだけでも腹が立っているんだから君たちで考えてほしい。
しかしそうばかりも言っていられないから話そう。
屋上に呼び出された。それもとてもかわいい女子だ。クレオパトラを百人つみあげてつくったピラミッドよりもかわいい。僕はクレオパトラを見たことがないので、それを百ともなると想像もつかない。しかしさぞ壮観でかわいいはずだ。
そんな人から呼び出される。それもとっても深刻そうなんだ。命かけてますといった具合なんだ。
そりゃもうあたりまえに告白だろう。こんな石ころに命を与えましたというような僕だが、きっとなんやかんや好きなところがあったのだ。僕はまったく僕の好きなところは見当たらないが、間違い探しの絵だって自分のまちがいに気がついていなくって、人から指摘されてやっとまちがいを知れる。そういうことだ。
どういうことだと思ったやつに三行で説明してやる。
とてもうれしい。
春が来た。
浮かれていてまともではない。
で、放課後の屋上へ駆けあがったわけだ。
彼女は待っていた。
広く真っ平な学校の屋上でふたりっきり。
日は傾いている。
一般的な景色だが、どうでもいい。彼女さえいればロマンチックだし、この鼓動がひびいて肉体を揺らす緊張感をもって恋だ。まったく初対面で、顔も知らない。
だからなんだ。
恋に時間が必要だというなら、僕はタイムマシーンをつくろう。それで過去にもどって、こんどは僕から告白してやる。それでまちがって、彼女が僕を好きになる手まえでもどってしまうと事だから実行はしない。けど今後のことも考えてタイムマシーンの設計はどこに売っているかネットで調べよう。
御託はいい。
こんな心境に弾みあがっている僕は、いざ彼女へ向かった。
みればみるほどかわいい。
目が大きい、小顔、きれいな肌、さすがクレオパトラミッド。
「どうかしたのかい?」
かっこをつけた。
ポケットに手を入れた。
声をやさしくした。
ほほえみの角度に注意した。
鏡で練習しておくべきだった。帰ったら部屋の壁全面を鏡にするよう親にかけあおう。合わせ鏡で無限に連なった自分の顔面を、それでも気持ち悪くおもわないようにする練習法をあみだそう。でも彼女が僕の顔面を好きでいてくれたら、僕も自分の顔面を愛せるから、家の改築はまた今度。
お話が脱線しまくっている。こういうときの人間の頭とはそういうものだ。ともかく僕のおろかな有頂天をちゃんとあらわしておきたかったんだ。失敬。
では彼女のことばを伝えよう。
原文ママだ。
とてもはっきりしていて、耳にこびりついている。あるいは僕の耳はそのことばばかり再生するイヤホンでふさがれてしまったといって差し支えない。
「嫌い。私ってあなたのことが嫌いなの。なんで嫌いってほら一目惚れってあるでしょう。てっことはその反対に一目嫌いだってあるはず。それ。なんだか不快なのよ。その幸せそうに丸い目つきとか、微笑みの角度とか。この思いをすぐに伝えたかった。でもあの場で盛大に伝えたら、ほかの生徒の人目もあってあなたは恥をかく。私も嫌な奴って思われたくない。そこでこう呼び出してあらためて伝えたの。わかったら金輪際もう目のまえにあらわれないで。顔もみたくない」
じゃあね。彼女はそう冷たかった。
キンキンの氷を心臓に直撃するよう投げつけられたら、傷口は熱くなるのか冷たくなるのかわからない。そんな混沌があった。僕は彼女が去ったあとも、あとを追わなかった。後追いで心の闇鍋がぐつぐつ言いだした。
ようやく動き出した僕の心の叫びを聞いてくれ。
なんて女だ。かわいくない。なんだって段取りってものがあるはずだ。まず好きになって嫌いになるもんだ。手をつないでデートして、結婚して、不一致があって離婚届だ。なんで結婚もなしに、離婚届が出されるんだ。手もつないでないのに離れるんだ。
一目嫌い? テキトウなことをいうな。僕は傷ついたぞ。慰謝料をふんだくろう。あんなことしておいて責任とってよと言いすがろう。
思い立ったら実行するのが僕という人間だ。
なので彼女を追いかけた。
慰謝料の内容だとか、責任だとかの内容は弁護士にまかせよう。そして弁護士費用を払わないでとんずらしよう。のちに僕はその弁護士から訴えられるけど、それも彼女のせいだと逆上してやる。
これが僕が腹をたてているあらすじ。
そして彼女との出会い。
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