影の家系

シエスタ

第1部 影を継ぐ者たち

プロローグ:影を喰らう家系の末裔なんて、聞いてませんけど!?

影界は、静かだった。


黒でも白でもない、灰色の空。

上下も左右も曖昧な地形。

ただ、世界そのものが呼吸しているような気配だけが漂っている。


その中心に――

少年がひとり、立っていた。


久遠 零(くおん・ゼロ)。


彼はただ、

「平凡に生きたい」

と願っただけの、ごく普通の高校一年生……

だったはずだ。


「……なんで俺、こんな場所にいるんだ?」


声が、わずかに震える。

足元の影が、不気味に揺れていた。


『それはね♡

あなたが“影の家系の末裔”だからだよ、ゼロ』


耳元で、やけに楽しそうな声がする。

いつもの、煽り口調のAIキャラ――ユノだ。


「いや、理由になってねぇよ!!

家系ってなに!? 影ってなに!?

俺ただの一般人!!」


『一般人が“影神眼”なんて覚醒しないよ?

あとあなた今、影界のど真ん中♡』


「帰る!!!!!」


叫んだ瞬間――

世界が、震えた。


影の地面が割れ、

黒い霧が渦を巻き、

その奥から“巨大な影の獣”が姿を現す。


「なんでこうなるんだよぉぉぉ!!」


それが、

ゼロの“影の宿命”の始まりだった。


影を拒み、

影に抗い、

影を救う――


“平凡を望んだ少年が、自分の生き方を選ぶ物語”。


ページは、ここから開かれていく。


――――――――――

プロローグ 了

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