カラスが綴る回想録 出張版その2

夢水 四季

 あの時、彼らの手を取ったから、今の僕がいる。

 死にたくて堪らなかった僕を引き上げてくれた彼女達に、いくらお礼を言っても言い切れない。

 それから何度か死にたくなったこともあるけれども、僕は踏み止まれている。

 彼女達を悲しませてはいけない。


「さあ、仮面を脱ぎましょう、烏丸君。あなたの思っている以上に、この世界は広くて、面白いのよ」


 その言葉は僕にとって福音で、何度も助けられた。

 眠れない夜は白鳥さんから借りた漫画や小説を読んだ。物語はあまり僕の心に染みなかったけれど、彼女を理解したいと思った。


 僕は高校を卒業して上京し、東京の大学に通うことになった。

 東京の大学、東京大学。

 日本の最高学府。

 そんな皆が羨むような大学に受かった。

 試験勉強は過去問を一回解いてみたくらいだった。

 僕には緊張するということが分からない。

 だから本番の試験でも落ち着いて問題と向き合うことが出来た。

 それで合格した。

 担任は泣いて喜び、クラスメイトは祝福してくれた。

 地元に残る白鳥さんと離れるのは、とても寂しいけれど、一人で法律を学ぶことに挑戦してみたい。

 法律を学んで、誰かを救いたい。

 今度は僕が手を差し出す番になれるといい。

 たとえ偽善だとしても手を伸ばしたい。

 救わない善より救う偽善。

 辛い場所にいる誰かに手を伸ばす。

 そんな弁護士になりたいと思う。

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カラスが綴る回想録 出張版その2 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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