第9話

 昼下がり――あなたがふとうたた寝から目を覚ますとベッドの脇で嫁が本を読んでいた。ろくに会話をしてこなかったが、嫁は用がなくてもこうしてあなたの部屋で本を読むことが多くなった。まるで本を読むことだけがただ一つの自由意思であるかのように。

 ほとんど感情をあらわにしない嫁が何を考えて日々生きているのかあなたにはわからない。ただ単に――いつ呼ばれるかわからないからこうしてそばにいるだけなのかもしれない。

 しかし少なくともあなたのことを煩わしい存在だとは思っていないようだ。それもこれもあなたが身内を自分の良いようにしつけたからだ――とはあなたは思わない。あなたは勝手にそれを好意だと決めつけた。あなたは無駄な欲求を突きつけなくなった。

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