セイレーンの巣にて
STUDIO QAZXOO (スタジオ・
呼び声
プロローグ:鉄くずの空
ジェイコブ・サリバンは、ここまで乗ってきたミリタリーバイクを捨てることにした。バイクのカウルには、基地の外壁の一部であろうか、巨大で鋭利な金属塊が深々と突き刺さっていた。
「……悪いことしたな」
混乱の中、半ば無理やり借りる形になった兵士の顔が浮かんだ。
覚悟はしていた。だが、ジェイコブが顔を上げて目にした光景は、その想像を遥かに凌駕していた。
まるで地上で巨大な花火が暴発したかのように、無数の金属塊が空へと打ち上げられている。
兵士たちの武器やヘルメット、大破したヘリや装甲車の残骸までもが、けたたましい金属音を撒き散らしながら、それぞれの軌道を描いて宙を舞っていた。
ジェイコブは、天を衝く鉄くずの奔流を見上げながら、諦めたように息を吐いた。
「これじゃ、俺もふっ飛ばされるな」
ジェイコブは冷静な手つきでジャケットのジッパーを引き下げ、地面に脱ぎ捨てた。続けて腕から腕時計を引き抜く。金属製のそれが地面に落ち、「カシャン」と甲高い音が響いた。
次に彼は、腰のホルスターから銃を抜き、慣れた動作で弾倉を外す。それらを躊躇なく、しかし静かに地面へ置いた。
最後に、頭を守っていたヘルメットに手をかけ、顎紐のロックを外す。最後の守りを手放し、彼は一切の武装を解いた。
ジェイコブは背後を振り返る。そこには、巨人が佇んでいた。
その顔といえる部分には目と思わしきものは何もなかった。にもかかわらず、巨人はその顔をまっすぐにジェイコブへと向け、その存在を確かに捉えていた。
「……俺は何でこんな馬鹿なことをするんだろう」
ジェイコブは、ふっと乾いた笑みをこぼした。
「そうだ……すべては、ソフィアのあのメッセージから始まったんだ」
脳裏に浮かぶ恋人の顔を振り払うように、彼はゆっくりと息を吐き出す。
「……行くか」
ジェイコブは静かに呟いた。
『ジェイク! やめろ!』
マックスの引き止める声が聞こえた気がしたが、たぶん空耳だろう。こんな、状況だ。聞こえるわけがない。
無数の鉄くずが、死の嵐となって荒れ狂う。その中心に向かって、ジェイコブは確かな一歩を踏み出した。
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