光源氏と可愛いだけの魔王女

確門潜竜

第1話 出会い

「お兄様。私を置いて逃げてください。このままでは・・・。兄様だけなら何とか逃げられます。私が足止めをしますから。」

 女勇者ルクレティア・ボルジアは、兄であり、賢者であるチューザレ・ボルジアの肩を借りて何とか歩いている状態だった。かなりの負傷をしていた。

「今ここで勇者様を、妹を捨てて言ったら、今後賢者、兄と名乗れなくなるだろう。それにお前がいなければ俺は何もできないんだ。黙って、一緒に逃げることを考えろ。」

と兄である賢者は𠮟りつけた。彼もかなり負傷していた。


「兄様。」

「うん。」

 二人の表情が険しくなった。気配を感じたからだった。近くに何者かがいる。この場所で出会うとしたら魔族の可能性が高い。後ろから十数人、それ以上。前から数人?挟み撃ちか?2人は身構えた。すると、前の方から笛の音が聞こえて来た。音の魔法か何かか?と緊張した。ドサっドサっと後方で次々に何かかが、多分魔族の兵士達だろう、倒れるような音がした。

「ん?」

 笛の音が止んだ。前方からの笛の音、後方の魔族が倒れた、多分、音というつながりから、前方から近づいて来る者達が敵ではない、という気がしたが、2人は警戒を解かなかった。

 ガさっ。木陰から1つの人影が現れた。2人の鎧、簡易だが、とは異なる、やはり簡易に思われた、見たこともない鎧を着た・・・人間だった。黒髪の若い男のようだったが、明らかに異国、この地そのものが異国なのだが、今まで会った者とも異なる、の者だということがわかった。そして、それ以上に・・・。


「おお、あなた方は・・・西方の勇者様と・・・賢者様ですな。ご無事なようで安心しました。多分、追ってきた魔族の兵士達は倒しましたので、しばらく余裕があるでしょう。お前達、勇者様方に肩を貸して差し上げなさい。」

と後ろを振り向いて命じた。

「はい。光の君。」

 彼の後ろから、エルフ?翼人?猫耳獣人?、狐耳9本尾獣人?、全員女だったが、飛び出してきた。

「さ、勇者様。さ、過多をお貸し下さい。いつまた魔族が来るかわかりませんから、急がないと。」

 エルフの女の言葉に、ボルジア兄妹は我に返ったという感じで、

「こ、これは申し訳ない。ご苦労をおかけする。」

 実は、2人ともしばし呆然としていたのである。一行のリーダーらしき男に見惚れてしまっていたのである。男である、チューザレも、である。


「あ、挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、和国から来ました源光と申します。あと、彼女達は。紫、葵、明石、朧月と申します。」

と光の君と女達が呼んだ男は、簡単に自己紹介をした。

 それに慌てて、チューザレが、ルクレチアは安心したせいか、ぐったりとして話をするどころではなかったから、

「私はチューザレ・ボルジアと申します。彼女は、私の妹で勇者であるルクレチアです。危ない所を助けていただき感謝いたします。」

と自分達も名を名乗った。

「では直ぐにここを引き上げましょう。」

と言って、笛を懐に光がしまった時、

「?」

 チューザレは不思議な物を2つ見た。


 1つは、透き通るような体をして、空中を泳ぐようにして光の元に来て、

「周辺には魔族はもういません。」

と囁いている女だった。

「精霊?」

 この男は精霊使いか?と驚いた。がそれ以上に、彼の傍らに、不安そうに彼の服の端を手で握っている小柄な少女、傷だらけで服もいたるところ破れ、汚れている。そして、二本の羊のような角、魔族だと直ぐにわかる特徴を持っていた。だが、そのようなこと以前に、見事な美しい赤銅の髪の毛と愛狂わしいとしか言えない顔立ち、雰囲気・・・。思わず、彼は彼女に見とれてしまった。

「兄様!」

 ルクレチアの厳しい声がした。ルクレチアの顔を見るとかなり怒っているようだったが、兄の視線の先を見ると、

「か、可愛い。」

と目を輝かせていた。

「ルクレチア・・・お前は。」

「兄様に言われたくありません。」

 そんな2人のやり取りを見て、聞いて、

「精霊の彼女は六条といいます。こうして私達を助けてくれているのですよ。え~と、この娘はここに来る途中魔獣と魔族の兵士に追われていたのを助けたのです。このまま保護して連れて行こうと思っているところです。」

と気軽すぎる程に言ったので、ようやく我に返っていたチューザレが、

「しかし、その娘、お分りになるかと思いますが、魔族ですよ。」

と指摘した。

「まあ、そのようですね。でも、見捨てておくわけにはいきませんしね。それから。」

「それから?他の理由が?」

「こんなに可愛い娘を見捨てられないでしょう?」

と破顔一笑の光に、

「そうですね。」

と心から同意してしまい、それ以上言葉がでなくなったチューザレだった。

 ルクレチアも、紫以下の女性達も頷くばかりだった。

「じゃあ、早くひきあげましょう。」

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光源氏と可愛いだけの魔王女 確門潜竜 @anjyutiti

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