和陰少女(わいんしょうじょ)
KEMMY|けみー
第一幕「出会い」
人と人ならざる妖怪と呼ばれる異形のモノがいた時代の、とある国。
一匹の白蛇の妖怪と、人を治める殿がいた。
力の強い白蛇はその力を統治に充てることなく、人との共生を望んでいた。
一方で殿は、その共生に甘んじたずさんな統治を行っていた。
良く言えば、緩い縛りのない性善説に基づいた統治が両種族間で成り立ち、
人と妖怪は無駄に干渉せず、時に協力し合う――そんな時代だった。
だが、陽があれば陰もある。
その陽の輪に入れぬ者も、確かにいた。
人を襲う人、妖怪を襲う妖怪。
人を食う妖怪、妖怪を悪と決めつけ切り捨てる人。
異種交配が起きないことをいいことに、互いをはけ口として傷つけ合う者たち。
多くはないが、珍しくもない。
全体で見れば、ぎりぎり成り立つ、居心地のいい時代。
――どちらにも属せない黒いヘビが現れるまでは。
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「はぁ、しんどっ。
山、なめてたわ…」
「ほんとにこんなとこ通ったのぉ?…
ここから妖怪の領地でしょぉ…」
「さっきのおじさん、嘘ついてるんじゃ…」
「あーもう、無理っ!
きゅうけーい!
どっかで休もっ!」
「んっ何だろあれ?
集落の廃墟?」
「こんなところに昔誰か住んでたのねー。
ちょうどいいわ、一休みさせてもらおっ」
「このボロ屋でいいか。
よっこらせと。」
「ん?
なにこれ!
最悪!
うんち落ちてんじゃん!!」
「エイッ!!」
――バシッ。
「いだっ!!
何をするたわけ!!!」
「え!?何っ?
あっ!……
ごめっ!
先っぽだけしか見えなくて、白いうんちかと」
「失礼なやつだ!
これはわしの髪じゃ!」
「それ……
あんた妖怪?」
「神じゃ!
いや。今はもう違うが」
「ん?
髪の毛の妖怪?」
「違う違う。
髪の毛がヘビなだけじゃ。
肩書は神じゃ。
……”元”、だがな。」
「ふーん、
こんなとこで何してるの?」
「まぁ、
暇つぶしじゃ。」
「へぇ……
暇潰し……ね。
……ならなんで……私たちを……
……いや、いいや」
「何じゃ?」
「ううん、なんでもない。
それより、ほんとにあんた神様?
ボロボロじゃない。
怪我してるし」
「まぁ……色々あってな。
家を追い出された。」
「怠惰だから?」
「ふっ。
まぁ、否定はできんな……
お前さんこそ、こんなところで何をしておる?」
「私も色々あってね。
姉探し。」
「何じゃ?
姉は売られでもしたのか?」
「違うよ……
出て行っちゃったの」
「ほー、そうか。
まぁこんな馬鹿そうな妹が嫌になったんじゃろうな」
「なっ!
失礼ねあんた!!
こう見えても組の私若頭なんだから!!」
「ほぉ、こんなのが……
可哀想な組員もおったもんじゃ」
「あんたほんと失礼っ!
それに、組員は……もうそんなにいない」
「それはお互い様じゃ。
なんか面倒そうじゃの。
じゃ、わしはそろそろ行くぞ。
昼寝も終わったからの。
団子でも食べて、また暇つぶしじゃ」
「あっ…ねぇ……
一緒に…来ない?」
「ん?
何じゃ?
寂しいのか?」
「いや……
そうじゃないけど。
なんとなく……」
「あいにくじゃが、
小娘の子守の趣味はないんじゃ」
「お、お団子!
お団子奢ってあげる!!」
「ほんとか!?
ほれ!行くぞ!!」
「あんたって現金なやつね……
神って嘘でしょ?」
「失敬な!ホントじゃ!
見ればわかるじゃろ!
この隠せぬ気品が!」
「まぁ、いいわ。
あっ名前教えてなかったね。
私は紫乃(しの)。
あんたは?」
「わしか?
わしは……そうじゃな……
しろじゃ。」
「ふーん、しろねー
似てるね。
"しろ"と"しの"」
「全然似ておらぬ。
一緒にするでない」
「何よ。変な名前のくせに!」
「へ、変じゃない!!
このちんちくりん!」
「何よこの白うんち!!」
「なっ!
と、取り消せ!!」
「やーだ!」
「ぬぅ!!
50本じゃ!
団子50本を要求する!!」
「そんなに食べれるわけ無いでしょ!」
こうして一人と一匹の奇妙な旅が始まった。
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