「気がついたら異世界にいました」

KEMMY|けみー

気がついたら異世界にいました

「こうか?」

「いや、違うか…」

ーーウィーン……

「あっできた!」



ーーズシャ


「魔王城だと言うのに、手応えないな。」


異世界にきてもう何年になるだろう?

2年?いや?5年くらいか?


今でこそ期待のルーキーともてはやされ、

今では魔王討伐に一番近い男とまで言われている俺だが、

前の世界の俺は惨めだった。


高校の時。

体育の時間に昼食べた弁当にあたり、

トイレに駆け込むもジャージの紐が絡まり、脱げずに脱糞。

ついたあだ名クソ巾着。


あまりのあだ名に不登校になりそこからニート。

家族に腫れ物扱いされながら生活していたが、

ある朝、気がついたらこの世界にいた。


どうやってきたかの前後は覚えてないが、

もう、過去に未練などない。


今の俺の目はもう、魔王にしか向いていない。


さぁ、この扉を開いて、この世界の平和を取り戻そうか。


ーーギィー


「良くきたな、勇者。

 噂は聞いてるぞ。

 だが、この魔王、そう簡単に打ち破れるものではないぞ?

 歴代勇者と同じく骨のコレクションに加えてやろう。」


「ふっ……

 そのコレクション、俺が引き取って遺族に返却してやるよ。


「いくぞっ!!」


ーーブッ…


「へ?」


「あー!すみません!コンセント抜いちゃいました……」


「え?…」


「バカやろー!

 親御さんから"コンセントだけは抜くな"って言われてただろ!

 うちのがすみません。

 ささ、ゲームの続きを……」


「え?……

 いやいやいや……

 ゲーム?

 てか、あんた達は?……」


「あー、申し遅れました……

 わたくし、坂本引越センターの、松…」


「あー!!

 とれてるじゃん!

 なんだよ起きたのかよー!」


「に、にいちゃん?……

 え?ここ……」


「あー、はいはい。

 いいからいいから。

 これ着けて、もっかいゲームの世界に行きましょうねー」


「いやいや、何これ!

 さっきから何つけようとしてるの!?」


「いや、これは…

 あっ、ほらこれだよ。」


テレビに目をやるとcmが流れていた。


「お宅のニート介護!

 大変ですよね?

 でも、このヘッドギアさえあればもう大丈夫!

 頭につけてスイッチオンで、お宅のニートはあら不思議!

 ゲームの世界にダイブして、もう意識は戻りません!

 ん?食事やトイレ?安全性?

 心配ご無用!

 口元のホルダーに、定期配送されるこの栄養パウチをセットしておけば

 ゲームに連動して勝手に栄養補給されます!

 おトイレもこの専用バキュームパンツで、

 下水に直行バイバイ!

 さぁ、おうちのニートを異世界に送り出しましょう!

 お値段はーー」


「え?…何これ?…」


「まぁ、そう言うことだから。

 バイバイ!」


抵抗するまもなくヘッドギアが被せられた。


ーーウィーン…


はるか昔に寝ぼけながら聞いた気がする音と共に

俺はまた異世界に舞い戻った。

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「気がついたら異世界にいました」 KEMMY|けみー @kemmy02

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