元大本営参謀の辻政信、過去に転生して大東亜戦争を回避します。

深山 鎮(みやま まもる)

第1話「ラオス」

1955年(昭和30年)に勃発し今なおも続いてるベトナム戦争を和平解決する為に1961年(昭和36年)、私は公務視察の名目でラオスに来航した。


ラオスでは和平交渉のために北ベトナム側のベトナム民主共和国主席のホーチミンと密会する予定だ。当初、ベトナムに来航したものの相手側はラオスのジャール平原を指定してきたのだ。

齢58歳にして足元がおぼつかない、平原を歩いているとキツツキの様な音と風を切る音と共に突然左頬を何かが掠めると血が垂れる。瞬時に私はその場に伏せて、匍匐前進で移動する。

「何だ…!!、何事だ!!」と私は内心焦る。しかし、キツツキの様な音と風を切る音には聞き覚えがある。旧日本軍の九二式重機関銃の発射音と酷似しているのだ。

私はポケットから白いハンカチを取り出すと目の前の長枝に巻き付けて相手に敵意が無いことを示す為に先に白旗付きの木の枝を掲げてからソッと立ち上がる。

立ち上がると私は大きな声で「私は日本政府の者だ!、敵意は無い!」と相手側に叫んだ。

しかし相手からの発砲は止むどころか、銃弾が太腿を貫通する。私は激痛に耐え切れずに尻餅をつく。


暫くすると、木の木陰から伏射していた人物が立ち上がりこちらに近付いて来ると開口一番「お久しぶりですね。辻さん。」と相手は名乗る。

私はつくつぐ驚かされた。目の前に立っているのは加齢により見た目が老いているものの、間違いなく西竹一少佐だったのだ。西竹一少佐は硫黄島で戦死し、大佐に2階級特進したはず。

その彼が今目の前に居る。かつての旧日本陸軍軍服と勲章を着用し、十四式拳銃を私に突き付けている。

「貴様ァッ……、生きていたのか?!」と私は押し問答する。

…すると相手は語りだした。

「辻さん。僕はね、あの戦争が本ッ…当に嫌いでした!!」

「愛馬を死なせなくちゃいけなかったし、もうオリンピックにも出られなくなってしまった。」

「日本は舵取りを間違ってしまったんです。多くの兵士も国民も死なせた最悪の戦争でした。」

「硫黄島の戦いで命からがら生き延びて、僕はベトナムでずっと戦ってきました。今は北ベトナム軍で少将をやってます。このベトナム戦争で鬼畜米英に勝てば僕は中将に昇進します。」


「だから……」と西竹一大佐は言葉を詰まらせると突き付けていた銃口を私の額に押し付けて「和平交渉なんて要らないんですよ。死んでください。さようなら、辻大佐。」


ジャール平原に一発の銃声が鳴り響くと沈黙が訪れる。






眼の前が暗転すると同時にまるで映画のフィルムのようにこれまでの人生の走馬灯が駆け巡る。「ああ、これが死んだ人間の感覚なのか。」と私は思いに耽る。「なんだかもう疲れたな…」と瞼を閉じる。












「…ぶ!」




「…さ…!」




「政信!!」




誰かが私の名前を呼んでいる。気付くと地面に倒れており、暑い日差しで頭がクラクラする。

「い…、今何年ですか」と眩しそうに瞼を空けながら目の前に居るお爺さんに質問する。

お爺さんは目を丸くして「なんでい、今年も分かんねえのか。今年は大正6年だっぺ」と言われて「は…?、大正6年??」唖然とする。


どうやら熱中症で気絶していたみたいで、近所のお爺さんが心配して水をかけたりしてくれたみたいでシャツは濡れていた。


私はジャール平原で西竹一大佐に射殺されたはずだが、どうやらタイムトラベルしたようだ。もしかするとこれも走馬灯が見せる幻想なのかもしれないがと自問自答し納得する。


今年が大正6年なら来年の大正7年に私は陸軍幼年学校に入校するはずだ。あまりゆっくりしている暇は無さそうだ。

私は……、いや。俺は元大本営参謀の元国会議員なんだ。これがもしも過去に転生したってことなら、日本の歴史ごと俺の未来を変えてやる!!


俺はお爺さんに頭を下げて御礼を伝えて実家に向けて走り出す。

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元大本営参謀の辻政信、過去に転生して大東亜戦争を回避します。 深山 鎮(みやま まもる) @Wing_Bear

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