NEMESIS
@Saul27027
序章(これはパイロットエピソードです)
授業の終了は、足音とリュックの擦れる音が秩序立って重なり合う騒音だった。党の工学学校の正門前では、数人の学生が小声で話し合っていた。ダリアンはその間を歩きながらリュックを拾い上げ、近くで交わされている二つの声を耳にした。
「物資配給の手伝いに行けば、党のポイントが追加でもらえるらしいわ」
制服にまだしわの残る少女が答えた。「不足しているの。人手が必要なのよ」
「行ってポイントを稼げばいいさ」
少年が返した。「あれだけあれば、今学期の実習費用が払える」
ダリアンは口を挟まなかった。それはよくある話だった。強制労働を“報酬”に言い換えただけの制度。ポイントとは、食料、交通、授業用資材へのアクセス権だった。多くの者にとって、それが月末まで生き延びる唯一の手段だった。
彼は肩をすくめた。工房用の材料を買わなければならなかったが、党のミーティングの影響で第1、第2、第3地区は閉鎖されている。もっと遠くまで行く必要があった。
「……よし」
小さく呟いた。「第4地区に行って買い物をしよう」
彼はR・ウィルソン大通りに出て、タクシーを呼ぶために手を上げた。公用車は流れるように走っていたが、私営タクシーはいまだ市内を横断する最速の手段だった。一台が縁石に停まり、運転手が窓を下ろした。
「どこまで?」
気のない声で尋ねた。
「第4地区です」
ダリアンは答えた。「授業の材料を買いに」
運転手は眉をひそめた。
「党の大集会がある。検問も渋滞も多いぞ。材料なら、第7地区以降のほうがいい。検問が少ないし、店も開いてる」
動き続ける都市、検問に立つ兵士、党の工作員に掃き清められた通り。ダリアンは一瞬考え、助言に従うことにした。
「じゃあ、第7地区へ」
「いくらだ?」
運転手は少し考えた。
「党ポイントで16だ」
ダリアンは頷き、財布を開いた。金属製カードに刻まれたポイントが鈍く光る。大金ではないが、材料を買うには十分だった。支払いを済ませ、車に乗り込んだ。
道のりは予想以上に長かった。中心地区の入口には検問が集中し、どこでも身分証とカード、許可証の確認が行われていた。車は主要ルートを避けて遠回りをした。曲がるたびに、時間と緊張が積み重なっていく。
到着すると、空気が変わった。古い工房と同じ匂い――油と煙の混じった臭い。第7地区は疲弊していた。割れた雨戸の閉じられた窓、外に出る者は少ない。通りを歩く人々は、皆視線を落としていた。
広場では、浮浪者たちが党ポイントを乞うていた。一人の女性が看板を掲げている。
「病院に受け入れてもらえなかった。娘は助けがなければ死ぬ」
病名を繰り返す声は、誰の視線も引き上げなかった。隣では、男が古い缶を叩きながら、足早に通り過ぎる人々に施しを求めていた。
ダリアンは一瞬立ち止まった。感情的な同情ではない。ただ冷静な認識――あの姿こそ、権力が見ようとしない決断の結果だった。彼は歩き出した。
必要なものは決まっている。金属、木材、ネジ、断熱用の布切れ。合計三キロ。それだけだが、工房で要求されている量だった。
細い路地と匂いのこもった通路を抜け、廃材店を見つけた。手描きの看板には「部品・金属」と書かれている。扉を押して中に入ると、やせた体の店主が、労働規律について語るラジオ番組を流していた。
「何が必要だ?」
店主が尋ねた。
「三キロ分の材料です」
ダリアンは答えた。「金属、木材、ネジ」
錆びた天秤が置かれ、店主は品を選び始めた。様々な金属、小さな板、ネジの袋。支払いの段になり、ダリアンはカードと財布をカウンターに置いた。店主はカードの残高を見て、驚いた表情を浮かべた。
「どこから来た?」
好奇心を隠さずに聞いた。「この辺じゃ、そんな残高は珍しい」
「第1地区です」
ダリアンは平然と答えた。
その言葉は石のように落ちた。店の隅、入口近くにいたくたびれたスーツ姿の三人が、会話を止めた。硬く、疲れた表情。ひとりが前に出て、短く言った。
「第1地区だと?」
信じられない様子で。「俺たちが飢えてる中で、ポイントを見せびらかす権利がどこにある?」
「見せびらかすつもりはありません」
ダリアンは冷静に返した。「授業の材料が必要なだけです」
男は唾を飲み、緊張が高まった。仲間たちが近づき、ひとりがテーブルを軽く押した。反応を試すように。
「問題を起こしたくなけりゃ、出ていけ」
別の男が警告した。「ここは第1地区の金持ちの場所じゃない」
ダリアンはカウンターに手を置き、三人を見た。説明することもできたし、支払って立ち去ることもできた。財布は開いたままで、残高は誰の目にも明らかだった。
「争うつもりはありません」
彼は言った。「支払います。必要なら、少し上乗せしてもいい」
店主は迷った。ダリアンを見、男たちを見、そしてカードを見た。事が大きくなった時の、古い恐怖が表情に浮かんでいた。
一人の男が前に出て、差し出された金属票を指差した。
「ポイントの問題じゃない」
低く呟いた。「習慣の問題だ。金持ち地区の人間が、ここを自分のものみたいに歩くのは好まれない」
挑発のために選ばれた言葉だった。広場、通り、視線がさらに閉じていく。外では配送トラックが走り去り、埃を巻き上げた。
状況がいつ壊れてもおかしくないことを、ダリアンは感じていた。支払って去れば、屈辱が残る。言い返せば、悪化する。何も言わずに退くこともできた。父は力を量れと教えていた。退却が最善の策になることもある。
「急いでいます」
冷たい声で言った。「他に用がなければ、支払って出ます」
男は横に唾を吐いたが、踏み出さなかった。店主はカードを受け取り、古い端末に通し、手間賃として追加料金を入力した。ダリアンは16ポイントを支払い、袋を腕にまとめて店を出た。外の空気は相変わらず重かった。
男たちは一歩下がり、体格のいい一人が、警告のように錆びたバッジをテーブルに置いた。言葉はなかったが、意味は明白だった。
ダリアンは荷物を持って外へ出た。境界を越える瞬間、看板を持つ女の視線、缶の音、わずかに震える店主の手を感じた。これで終わりではないと悟った。どこかで都市は息を潜め、別の場所では確執が育ち続けている。
彼は重くなった袋を手に、大通りを歩いた。それは単なる重さではなかった。分断された都市の摩擦だった。父のこと、屋根裏の金属箱、見つけたメモを思い出す。断片は、まだ全貌の見えない地図の上で噛み合い始めていた。
角を曲がると、遠くで拡声器が物資配給のボランティアを呼びかけていた。ポイントは、手を伸ばす者を待っている。タクシー運転手は約束通りの料金を取った。都市は台本通りに動き続ける。動ける者は動き、動けない者は見つめる。
ダリアンは深く息を吸い、袋の口を強く握った。必要なものは買った。だが、内側で何かが変わっていた。日常という殻に亀裂が入り、箱の中のメモが思い出させる――時に、一本の糸を引くことだけが、すべてが結ばれているのか、それともほどける余地があるのかを確かめる唯一の方法なのだ。
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