当事者が思う、うつ病の回復過程
のほほん村の尊重
第1話 うつ病は心ではなく脳病
「うつ病は気の持ちようだよ」
「甘えているだけじゃない?」
「もっと頑張れば何とかなる」
もし、こんな言葉をかけられたことがあるなら、
そのとき、どんな気持ちになったでしょうか。
僕は、
胸の奥がぎゅっと締め付けられるような、
とても苦しい感覚になりました。
「やっぱり自分が弱いんだろうか」
「努力が足りないだけなのか」
そんなふうに、
何度も自分を責めました。
でも、今ははっきり言えます。
うつ病は、心の弱さではありません。
医学的に証明されている“脳の病気”です。
現在の精神医学では、うつ病は
「脳機能障害(brain dysfunction)」
として分類されています。
少し難しい言葉ですが、
簡単に言うと
脳が本来の働きをできなくなっている状態
という意味です。
性格の問題でも
考え方の癖でも
甘えでもありません。
脳という臓器の不調
それが、うつ病です。
⸻
僕は、うつ病になってから
1年半ほど休職しています。
その間、
本当に何もできない日が
何百日もありました。
・布団から出られない
・歯を磨く気力が出ない
・スマホを見るのもしんどい
・トイレに行くのに覚悟がいる
ただ天井を見つめて
時間が過ぎるのを待つだけ。
「今日も何もできなかった」
その事実が、
さらに自分を追い詰めていきました。
でも、これは怠けではありません。
「意欲の低下」は
意思の問題ではなく、
神経伝達物質の異常です。
少し専門的に言うと、
・セロトニン
・ドーパミン
・ノルアドレナリン
こうした
**脳内ホルモン(神経伝達物質)**の
バランスが崩れることで、
・やる気が出ない
・何も楽しく感じない
・体が鉛のように重い
といった症状が出ます。
つまり、
やる気が“ない”のではなく
やる気が“出せない”状態
なのです。
⸻
脳には、
・前頭前野
→ 思考・判断・計画
・扁桃体
→ 不安・恐怖
・海馬
→ 記憶・ストレス調整
といった重要な部位があります。
うつ病では、
✔ 前頭前野の活動低下
✔ 扁桃体の過剰反応
✔ 海馬の萎縮
といった
構造的・機能的変化が
MRIやPET検査で確認されています。
つまり、
「気分の問題」
「メンタルの問題」
ではなく、
脳の回路そのものが
正常に動いていない状態
ということです。
この状態で
「前向きに考えよう」
「切り替えが大事だよ」
と言われても、
それは
骨折した人に
「走れば治るよ」
と言っているのと同じです。
⸻
うつ病が理解されにくいのは、
外から見えない病気
だからだと思います。
ギプスも
血も
目に見える傷もない。
だから
「元気そうじゃん」
「普通に見えるよ」
そう言われてしまう。
でも、脳は
人体で最も繊細な臓器のひとつです。
一度バランスを崩すと、
回復には数ヶ月〜1年以上
かかります。
スマホなら
再起動すれば直ります。
でも、
脳は再起動できません。
時間をかけて
少しずつ回復させるしかないのです。
⸻
大切なことを言います。
うつ病は
気合や根性では治りません。
治療の基本は
・休養
・十分な睡眠
・環境調整
・必要に応じた薬物療法
です。
「頑張れ」という言葉は
悪気なく使われます。
でも、
うつ病の人は
もう十分すぎるほど
頑張ったあとなのです。
⸻
この連載では
・脳で何が起きているのか
・回復過程の科学
・再発しやすい理由
・寛解とは何か
こうしたことを
医学的に正確に、
でも分かりやすく書いていきます。
そして、
著者本人が実際にやっていること
睡眠
生活リズム
人間関係
考え方
全部、正直に書きます。
⸻
もし今、
「何もできない自分が嫌い」
「このままじゃダメだ」
そう思っているなら、
覚えておいてほしい。
それは
あなたの責任ではありません。
脳のエネルギーが
枯渇しているだけです。
今は
治療中なだけ。
休むことは
逃げではなく
回復行動です。
⸻
次回
「脳の中で何が壊れているのか」
前頭前野・扁桃体・海馬を
もう少し詳しく説明します。
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