元最強魔法使い。力を隠して学園生活を謳歌する

紙ノ天気

プロローグ

 私は最強だった。

 別に自慢では無い、大陸中で私に勝てるものは誰一人としていなかった。

 しかし、それが不幸の始まりだった。

 街の人からは怪物と言われ、挙げ句の果てには魔族とも言われる始末だった。

 そんな事を言われる為に力をつけたわけでは無い。それだったらこんな力要らなかった。

 それからというもの、私は森に姿を隠して生きていた。

 だが、誰かが嗅ぎつけて来たのだろう、私が眠っている時に回復阻害の魔法がかけられた剣で腹部を刺されてしまった。

 抵抗虚しく、出血が止まらなかった。

 やがて体が冷たくなっていき指先もまともに動かなかった。


 走馬灯だろうか、学園の横を通った時に見えたキラキラした制服、活気のある声、私は青春というものをしたことがなかった。

 死ぬ前だというのに走馬灯がこんなものなんて、我ながら呆れた。

 …でももし、次の人生があるのなら、私は学園生活を謳歌したかった。

 そう思いながら私は瞼を閉じた。


○●○●○●○

 誰かが叫んでいた。


 「ルルネ!目を覚ましたの!?」


 うるさいな…私は死んでいるのに…いや、生きている?

 体が異常に重かった。それに、手と足が短いように感じた。


 「…?」

 「ルルネ!大丈夫⁉︎」

 「えっと、どちら様でしょうか」

 「お母さんのこと忘れたの?」


 ここはどこだ?少なくとも私の家ではなかった。

 それに目の前にいるお母さんと言う人にも見覚えがなかった。

 私の両親は幼い頃に亡くなった筈だ。

 それに私の名前はルルネでは無い。私の名前は…あれ、何故か名前を思い出せない。


 「怪我の後遺症かしら…記憶を失ってるの?」

 「えっと、ごめんなさい?」

 「良いのよ、ルルネが無事でいてくれたのなら」


 何故そんなに心配するのかと聞いたら、この体は馬車に轢かれ、数ヶ月の間寝たきりだったらしい。

 …多分元の体の持ち主では無いと言ったらこの人は気絶するだろう。

 記憶喪失の方が都合が良かったからそう言うことにしておこう。


 「ここはどこなの?」

 「忘れた分はまた教えてあげるわ、ここはハールメン王国よ」


 そんな国聞いたことがなかった。

 私がいた世界とこの世界は違う?

 何かの書物で読んだものの中に、別の次元に魂を宿らせる禁忌の魔術を見たことがあった。

 私はその魔術を好奇心でやろうとしたけど全て失敗に終わった黒歴史があった。


 「私って今何歳?」

 「9歳よ」


 9歳…まだ体が若いな。私がこのぐらいの時は殆ど魔法が使えなかった時だ。


 「お腹空いたでしょ?ご飯用意するからね」


 お母さんと言うその女性は部屋から出ていってしまった。

 私は誰も見ていないと思い、魔法を使ってみた。


 「使える…しかも全部」


 私は前の世界で使えた魔法を全て使えていた。それに、この体は魔力の量が前の世界の倍以上はあった。

 この世界ではこの力は隠しておこう…また一人になるのは嫌だから。

 あれからこの体のお父さんが帰って来て、私の姿を見て大泣きしていた。

 なんだか騙しているようで心が苦しくなってきた。


 夜一人になって私は考え事をしていた。

 前の世界では叶えられなかった夢が叶うかもしれない。

 元の体の持ち主には申し訳なさの気持ちでいっぱいだが、私はこの世界で学園生活を楽しむのだ。

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