第1話 「終わりの始まり」

 ルナリア王国 深淵迷宮エテルナ。

 深淵迷宮と言われる程、深く、階層数も未知である。

 俺は、第一階層にてひたすら苦戦していた。

 相手はゴブリンである。


 ゴブリンはそこそこ知能を持っていて、人間の使っている道具は見て学び、使いこなせる。

 そのため、駆け出し冒険者の俺では、ツルハシを振り回すゴブリンに近づくことさえままならない。

 怪我を恐れ、動きが躊躇している。


 冒険者登録をして約3ヶ月。

 俺は何をしていた?

 自分に問いても具体的な返事は来ない。

 努力をしていないからだ。

 いや、『できない』が正しいのだろうか。

 人間は心が原動力だと聞いた事がある。

 目標がない俺には努力をする理由がない。


 俺はアポロン王国の平民の家庭で育った。

 両親は病気で死亡した。

 悲しくはなかった。

 両親を一緒に暮らしている他人ぐらいにしか思っていなかったからだろう。


 両親が死んだことで、俺は自分で金を稼がなくてはならなくなった。

 俺はどうするべきだったのか。

 答えは簡単だ。

 勉強をして、そこそこ良い学校を卒業して、何かしらの職に就く。

 そうすべきだったのだ。

 でも俺に夢はないからと逃げ続け、今はこのザマである。


 かろうじて、読み書き算術はできる。

 というのも、俺は日本からの転生者だからだ。

 この世界の言語は発音こそ似ていないが、文法は日本と同じだったため、幼少期の読み聞かせで覚えることができた。


 …………あぁそうか。

 俺死ぬ前から何もしてないのか。


 勉強ができないのは前世からである。

 地頭が悪いわけではないよ?(たぶん)

 ただ努力ができない。


 でも……

 それでも今まで守ってきた“モノ”がある。




---




 彼女は優しかった。

 クズだった俺を唯一変えることのできた人だ。

 口を開けば金貸してくれの一言。

 髪を指でクルクルさせながらなんやかんや貸してくれる彼女。

 彼女から金を受け取れば愛してるぜとパターン化されたセリフ。

 そんな俺が、今や真面目に働き彼女を家で待たせている。


 彼女を好きな理由はもちろん金を貸してくれるからではない。

 両親を失った時、全身全霊で支えてくれたからだ。

 彼女に人生を賭けて恩返しがしたい。

 そのために彼女と共有している口座に貯金もし続けている。

 けれど、口座には思ったより貯金は貯まらない。

 もっと頑張らないと。


 よく物語で、この人に会うために自分は生まれて来たというセリフを聞くが、その気持ちが分かった気がする。

 彼女との出会いが俺を変えた。


 その出会いも今日で5年となる。

 俺はカバンとケーキで両手を塞いだまま、静かに帰宅した。

 0歳の息子もいるしね。


 靴を脱ぐ時ふと気づく。

 異様に静かだと。

 いや、静かなのは良いことだ。

 息子もスヤスヤ眠れているし、彼女も楽できているのだろう。

 けれど、夜泣き対策として点けている柔らかな間接証明すらない。


 その瞬間、俺の中で鈍い警報が鳴った。


 足音、息を殺し、寝室を確認する。

 薄暗い部屋で、ベットに押し付けられている彼女の姿。

 その上を覆い被さる全裸の男。

 自分の目を疑った。


 そうだ。

 きっと彼女が一方的に犯されているに違いない。

 彼女が浮気をするはずがない。

 そう思い、自分の中で怒りが爆発した。


 刃物を持ち出した俺は問答無用で男を刺した。

 逃げようとする男の足を切り裂き、

 倒れた男に跨って何度も刺した。


 酸素を求める肺。

 震えた手足。

 けれど不思議と罪悪感はなかった。


 やがて俺は立ち上がり、ニコッとして彼女に言った。


「もう大丈夫だよ。

 ストーカーは殺したから」


 涙ぐんだ彼女は呆然として動かなかった。

 彼女から恐怖の様子は感じられない。


「……なんで殺したの?」

「だって君を……」


 俺は言葉を詰まらせた。

 彼女は意味の分からないことを言い始めた。


「実は妊娠してるの」

「それは誰との?」


 聞くつもりはなかった。

 けれど、衝動的に聞いてしまった。


「もちろんあなたとの」


 すぐに嘘だと分かった。

 しばらくは彼女の負担になると思い、控えていたからだ。


「ねぇ、なんで嘘をつくの?」

「ちゃんと話したら包丁置いてくれる?」

「うん」


 彼女は一息置いて話し始めた。


「私はね、あなたとの生活にウンザリしていたの。

 高卒工場勤務の貧乏。

 おまけにコミュ症のクセに仲が良くなると調子に乗るようなクズ」

「うん、それで?」

「で、政治家である彼との間に子供が欲しかったのよ」

「ならお金がなくても幸せって言ってくれたのは?」

「そんなの嘘に決まってるでしょ

 それに私は…………だから」


 今まで見たことのない顔で彼女は言った。


「ありがとう話してくれて。

 でもごめんね」


 そう言って俺は包丁を握り直した。


「なんでよ!」


 俺は彼女を殺した。

 本物(ニセモノ)を偽物(ホンモノ)にするために。


 そう。

 彼女は何かに取り憑かれていたのだ。

 そうに違いない。

 なら彼女を守るためには殺すしかない。




---




『舐められるくらい優しい人間になりなさい』


 子供にはそう教えていくつもりだったらしい。

 俺も息子のお手本となるために優しい人間になろうと心がけた。

 それが(優しかった方の)彼女との約束だから。

 彼女の分まで俺が永遠と罪を背負って生きたい。

 そう思っていたけれど、

 息子が5歳になった頃、俺は交通事故で死亡し、この世界に来た。

 唯一の心残りだ。

 (優しかった方の)彼女からもらった言葉は息子に伝わっているだろうか。


 とにかく俺は、彼女を守るためにどれだけ憂鬱でも生きなければならない。

 日本で死んでしまったことは残念だ。

 息子は元気だろうか。

 息子が中学生高校生ぐらいになったら女には気を付けろよ、て教えておきたかったな。

 俺と一緒で性欲強いんだろうな。


 息子の顔をよく思い出しながら、無気力な14年間を過ごしていた。



 ゴブリンがツルハシを遠心力を利用して振り回す。

 タイミングを窺いつつ、距離を取り、

 ゴブリンがよろけたタイミングで首を切り落とした。


「ふぅ……」


 ゴブリンの身体が灰になっていく様を確認すると、安堵のため息をつく。

 後方から拍手が聞こえてきた。

 振り向くと一つのパーティが戦闘が終わるのを待っていてくれたらしい。


「ごめんなさい、邪魔でしたか?」

「いや、そんなことないぞ」


 と、二十代くらいの男が肩を組んできた。


「フィンお前腕を上げたな」

「そうですか?ゴブリン一匹倒しただけですよ?」

「いやいや、先月なんてゴブリンに殺されかけてただろ」

「まぁそうなんですけどね」

「なんでフィンは冒険者になったんだ?」

「理由なんていります?」


 冒険者(この)職は死と隣合わせで仕事をする。

 正直俺も最初は頭おかしいヤツしかこの仕事をしないだろうと思っていた。


「まぁ、強いて言うなら父の勧めですかね」

「ふ〜ん、子供には冒険をさせようってか?」

「そんなとこじゃないっすか?」


 父が死に際に俺に言った。

 お前はこれから冒険者になりなさい。

 色んなことを自分の目で見て、体験して、色んな人と関わることで成長するんだ。

 そんなことを言っていた。


 確かにお金も手に入る。

 ゴブリンの魔石一つでパンが2つ程買える。

 もちろん上位種になれば、それだけ魔石やドロップアイテムの価値も跳ね上がる。


「俺はそろそろ帰ります」

「もう帰るのか?」

「はい、今日の夕食分はありますので」

「お前、安牌すぎるだろ」


 魔石の入った袋を確認する俺に彼は苦笑した。

 俺は彼の苦笑を止めるように言い訳をする。


「俺は強くなりたいわけでも、金が欲しいわけでもありません」

「にしてもだろ」


 そこそこ強いあなたにはさぞ滑稽に見えるでしょうね。


「おーいグロム、そろそろいくぞー」

「うい!」


 じゃまたな、と手で挨拶をして俺に背を向けた。

 俺も頑張ってくださいと返すと、こちらを振り向き、親指を立ててきた。

 良い職場である。

 この雑魚が!邪魔なんだよなんて言うような人は滅多にいない。

 それに大半がフレンドリーだ。

 話しかけるのが苦手な俺にもみんな気軽に話しかけてくれる。

 グロムもその一人だ。


 ダンジョンを出ると、鋭い陽射しが俺を刺してきた。

 まだ日中である。


 魔石に値段が付いてるのは、もちろん利用価値があるからだ。

 道に並ぶ電灯、魔石に含まれる魔力によって夜だけ光る。

 簡単に言えば、日本で言う電気エネルギーを魔力で補っているような状態だ。


 けれど、それはこの町、この国の特色である。

 アポロン王国では魔石を使った人工物は存在しなかった。

 というのも、魔石を持つ魔物はダンジョン内にしか存在しないからである。


 森などにいる魔物は全身に魔力を浴びていてそれが生命力となる。


 迷宮都市エテルナの深淵迷宮エテルナまで続くメインストリートの端の方を歩いていた。

 けれど、俺は目を引く存在らしい。

 町で働く人に比べて、ダンジョン帰りの冒険者は武装しているしやや浮く。

 それも俺は昼間に帰宅している珍しい冒険者だ。

 けれど俺が辺りの人の目を引く理由はそこではない。


 冒険者にもそれぞれ職にあった格好をする。

 大まかに見れば俺は剣士の部類に入るだろう。

 けれど、他と異なる点がある。

 右腰に短剣を携え、左腰に長剣を携えていることだ。

 二刀流も少なからず存在しているが、短剣や短刀の二刀流がメジャーである。

 あるいは、少数派だが長剣を2つ持つ人もいる。


 じゃあなぜ、俺は片手片手で違う武器なのか。

 俺にも分からん(?)。

 父がそうしていて、そうしろと言われたからそうているだけである。

 確かにそれぞれに良さがあって場面場面で使いわけられるけど、基本的に俺は長剣しか握らない。


「……」


 いや、俺が目を引く存在ではないのか?

 人の目を気にしているから見られているように見えるだけかもしれない。

 仮に俺が魔術師だったとしても自分の格好を気にしていただろうか。

 人の目を気にせずに生きていけるならそれがいい。


 メインストリートの端を歩き続け、最短でパン屋に入店する。

 扉を開けたと同時に鈴が鳴り、作業をしていた店員がこちらを見る。


「いらっしゃいませ〜……あっ」


 こちらに気付くと、ニコッととして対応してくれた。


「こんにちは!今日もサンドイッチですか?」

「はい、お願いします」


 他のパンに比べると値段は高め。

 けれど、手早く栄養を摂取できる最高の一品である。

 卵や肉、野菜をいっぺんに摂ることができる。


「ずっっっとサンドイッチばっかりですけど、好きなんですか?」

「好きっていうか美味しいんで」

「うふふ、それ同じじゃないですか?」


 適当に言ったことでも彼女は上品に笑ってくれる。

 笑顔って大事なんだなとつくづく思う。

 けれど怖いとも思う。


「第四階層には到達できましたか?」

「いえ、まだです。ちょっと怖くて……

 ゴブリン倒すので精一杯なんですよ」

「そうですか。まぁ私は偉そうなこと言えませんがゆっくり頑張ってくださいね」

「はい、ありがとうございます」


 彼女の名前はリリネ。

 名前を知ったのは最近だ。

 美人だから顔は印象的だったのだが、パン屋店員とその客から関係は深まらないだろうと、名前を聞き損ねてしまった。

 今更名前を聞くのもなぁみたいな、そんな感じでしばらく聞けず、他の店員がリリネと呼んでいたのを聞いてようやく知った。


「ちゃんと装備の手入れはした方がいいですよ。

 この前手入れを後回しにして大怪我した人を聞いたので」

「まじっすか、気を付けます」


 と、会話をしているうちにリリネは手慣れた手付きでサンドイッチを袋に詰める。


「はい、サンドイッチとおまけです」

「……おまけ?」


 受け取った袋を確認すると、見慣れたサンドイッチの隣に黒い何かが入っている。


「チョコクロワッサンです」

「あ、ありがとうございます」


 カクっとお辞儀をしておく。


「あ、他の人には内緒でお願いしますよ〜」

「なんでですか?」

「バレたら私の給料から引かれますから」

「あーなるほど」


 どうやら駄目なことらしい。

 常連へのサービスではなかった。


「ありがとうございます」


 代金を払い、最後にもう一度お礼を言って退店した。

 ガラスの扉越しに手を振るリリネを確認して後にした。


 俺は袋を開き、チョコクロワッサンとにらめっこをする。

 甘い香り。

 数ヶ月ぶりの甘い物である。

 甘い物に飢えていた俺には、その香りは腹の虫を騒がせるものだった。

 しかし、迷うことなくチョコクロワッサンをゴミ箱に捨てた(?)。


 勿体ないし、罪悪感もある。

 けれど、人の善意、笑顔には裏があるのだと知っている。


 リリネは俺に同情をしてクロワッサンを渡しのだろうか。

 いや、ない。

 そこまで親しく関わった覚えがない。


 毒を仕込んだクロワッサンかもしれないという懸念。

 彼女が俺を殺す理由も動機もないことは分かっている。

 懸念が杞憂であって欲しいとも思う。

 けれど1%、いや0.1%でも可能性があるのなら対策をして損はない。

 ただの被害妄想である。




---




 平凡な冒険者生活。

 安牌な冒険。

 慣れ親しんだ毎日が当たり前に繰り返され、

 それが当たり前に続くのだろう。

 今日も生活費を稼ぐためにダンジョンを潜り、ゴブリンを数体倒して帰還。

 そしてパン屋に顔を出す。


「こんにちは」

「あっ!こんにちは!」


 リリネは俺の声に、というよりかは扉の鈴に反応して挨拶をした。


「今日もサンドイッチですか?」

「はい、お願いします」


 リリネは手慣れた手付きで袋を広げ始める。


「なんか、最近モンスターが少ないらしいですね」

「そうなんですか?3階層ぐらいまで普通でしたけど」

「20階層辺りは見渡してもモンスターがいないみたいな話を昨日聞いて……何か起こるかもしれないので気を付けてくださいね」

「20階層って……その人達結構プロなんですね」


 モンスターが少ないこと。

 かなり不自然である。

 エテルナ迷宮では無限に魔物(モンスター)が湧くとされている。

 ダンジョン内の魔力が不安定なのだろうか。

 もしくはダンジョン内の生態系崩れたとか。

 素人の俺が考えても仕方ないか。


「確かにモンスターが少ないと生活に困りますしね」

「いや、そういう意味じゃなくて」

「知っています」


 嵐の前の静けさというヤツだろうか。

 モンスターが減ったから何?と言った感じで不安は全く無い。


「絶対に死なないでくださいね」

「肝に銘じておきます」


 俺は一礼するとすぐに退店した。


 リリネが俺を気にかける理由はなんだろうか。

 4階層以降に踏み入れないならなんのため冒険者やってるんだ?みたいな。

 いや、そもそも誰とでも仲良くできるタイプなのかもしれない。

 実際魔物が少ないという話は上級冒険者から聞いたらしいし。



 俺は次の日もその次の日もダンジョンに潜り、最低限の金を集めた。

 けれど、その次の日に異変は起こった。


 いつものように軽装の装備と、短剣長剣を両腰に携えてダンジョンに潜る。

 日によっては1階層で魔石が集まることもある。

 けれどこの日はゴブリンはいなかった。

 不思議に思ったが、深く疑わずに2階層に降りる。

 静かだった。

 響き渡るのは水滴の滴る音だけ。

 魔物の声は聞こえない。


 3階層に降りた。

 何もいなかったら今日の食事無し?と考えつつ無警戒で歩く。


 声。

 ゴブリンの声である。

 俺は角から頭だけを出し、様子を確認する。

 斧を持ったゴブリンだった。


 どうする?

 戦闘になれば少なからず俺は苦戦する。

 距離的には遠くない。


 俺は数ある選択肢の中から奇襲という手段を取る。

 長剣を握ろうとしていた手は引き、短剣を握る。

 魔石を傷付けないように頭か首あたりを狙う。


 俺はズンっと踏み込み、短剣を振り下ろす。

 けれど、ゴブリンも必死だった。

 ゴブリンがここで何を目的として何をしていたかなんて知らない。

 けれど生きていることに変わりはないのだ。

 短剣は首元をかすり、ゴブリンは血を垂らしながら逃げ出す。

 俺はすかさず追いかける。

 その時だった肩をポンッと掴まれた。


 魔物か?

 狩ることに必死だった俺は周囲の警戒ができていなかったらしい。


 思考するより速く、反射的に短剣を振る。


「おいっ!危ねぇ!」

「…………っあ?」


 グロムだった。

 俺は危うくこちらの世界でも人殺しになるところだった。


「す、すいません」

「こっちこそすまん、だが追いかけるのはやめといた方がいいぞ」

「なぜですか?」

「なんとなくだ。長年冒険者をやっていた俺の勘が危険信号を出している」

「……ふぁ?」


 俺はその瞬間リリネとの会話を思い出した。


「けど、モンスターを狩って魔石を売らないと今日の食事がないっす」


 グロムは一つ深いため息をつく。


「今日は俺が奢ってやるから、強くなって貯金できるくらい稼げよ?これからは」

「え?頑張ります」


 一瞬困惑したが、食事代が浮くのはありがたい。

 けれど、仲いい先輩だからと言って信用していいのだろうか。


「だから今日は帰るぞ」


 俺はグロム一行と同行し、無事ダンジョン入り口前まで到着した。


 …………?


「おい、どうなんてんだ?」

「あれ?俺らここから入ってきたよな?」


 どうやら騒ぎらしい。

 なんのトラブルだろうか。

 あまり俺を巻き込まないでくれよ?


「どうしたんだ?」


 駆け寄ったのはグロムだった。

 なんだこのお人好しは。


「なんかダンジョンの出入り口がねぇんだ!」

「そんなわけないだろ」

「本当だって!」


 確かにダンジョン出入り口はここである。

 3階層までしか行ってないので、数え間違えるはずもない。


「グロムさん、確かにここが出入り口です」

「そうか?とりあえず魔術でぶっ放してみようぜ」

「崩れるかもしれませんよ?」

「ダンジョンから出れないよりいいだろ」


 いや、死ぬっつってんだよ。


「なら俺は離れておきます」


 ある程度距離を取り、グロムのパーティメンバーが魔術を詠唱した。


 バスケットボールサイズの炎弾が壁に直撃した。

 誰もが開いたと確信するような威力だった。


「…………えぇ?!」


 撃った本人が1番驚いていた。

 壁は無傷だった。


 その後何度も試したみたが、壁に傷一つ付かなかった。


「はぁ、俺ら閉じ込められたってのかよ」

「くっそぉぉ家族待たせてんのに」


 俺達は閉じ込められたのか?

 誰かのタチの悪いドッキリじゃないのか?


 この閉じ込められたという現実は、どうにも信じ難い物だった。


「グロムさん、閉じ込められたんですか?」


 俺は不安気に聞いた。

 唾を飲み、返事を待った。


「そうみたいだ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る