クリスマスパーティ
「メリークリスマス!」
医院の診療時間を終え、月詠家の全員がダイニングに集合してクリスマスパーティを始めた。
宵と彗、その両親と祖父母、そして3人の叔母、合計9人のクリスマスパーティは、とても盛り上がった。
春華と夏波が用意してくれた料理とケーキは美味しく、宵も彗も大満足だった。
恒と昴はシャンパンを開け、顔を赤くしながら大きな声で笑っていた。
「いやぁ、昴くん!君は実に良い男だ!よくうちに来てくれた!」
恒は、義息子である昴の肩をバンバンと叩いた。千夜は「ちょっとお父さん!」と恒を止めたが、昴は「いいんですよ、お気になさらないでください」と笑った。
「秋奈は本当に良い男と結婚した!それなのに、お前らときたら……」
恒は秋奈以外の三人の娘を見た。
春華、冬子が嫌そうな顔で父の方を見たが、夏波は「あら」と不敵な笑みを浮かべた。
「お父さん、前に紹介したじゃない。私の彼氏」
その瞬間、恒の表情が変わった。
その顔には険しく、強い怒りが出ている。
「夏波、お前!まだあんな男と付き合っているのか!?別れろと言ったはずだ!あんな、ヤクザの男なんかと!」
「えー?誰でもいいから結婚しろって言ったのはお父さんじゃん。それに彼、すっごくカッコいいんだから」
「そういう問題じゃない!!」
恒はテーブルを強く叩いた。
その衝撃で彗は驚き、「うわあああん……」と泣き始めた。
「あ、ああ、彗ちゃんごめんね。おじいちゃん怖かったね」
恒はすぐに柔和な表情に戻って席を立ち、彗の事を抱いてあやし始めた。
「ふん、とにかく『誰でもいい』って言ったのはお父さんだから。それにヤクザ一家と魔女の一族なんて、とってもお似合いだと思うけど?」
夏波の言葉に恒は再び激昂したが、間に千夜が入って「二人とも、子供が見ているんだから!」と場を収めた。
「じゃあ、子供たちはそろそろお風呂に入って寝ないとねぇ」
千夜がそう言うと、状況を理解している宵は「わかった。おばあちゃん」とすぐに席を立ち、彗を連れて風呂場に向かった。
─────────────────
風呂に入り子供部屋に入った二人は、ベッドに入っても一階から夏波と恒のものと思われる激しい口論や、食器が割れる音が聞こえるため中々眠れず、宵も彗もただベッドに横になっているだけだった。
「眠れないね」
「ああ」
彗に話しかけられ、宵は小さく返事を返す。
「でもさ、このまま起きてたらサンタさんに会えるかも?」
「……いや、早く寝よう」
「えー、なんで?」
「サンタさん、たぶん俺たちが起きていると都合が悪いよ」
宵は歳の割に心が大人びており、「サンタさん」の正体に気がついている。
今夜自分達の枕元にプレゼントを持ってきてくれる「サンタさん」の為に妹を早く寝かした方がいいと判断した。
しかし彗が眠る様子は無い。
サンタに会いたいという決意が強いのか、寝息ではなくふんふんと強い鼻息が聞こえる。
(……困ったな。こいつ、ずっと起きてるつもりか?)
しばらくすると、誰かが階段を上がってくる足音が聞こえた。
ガチャリ
「二人とも、まだ起きてるのね?」
子供部屋のドアを開けたのは、母の秋奈。
今夜、彼女にはクリスマスプレゼントに関するミッションがある為、子供達が寝ているのか起きているのかは重要な問題だ。
「なんでわかったの?」
彗が返事をすると、秋奈は「お母さんは、なんでもお見通しなのよ」とふふん、と鼻を鳴らした。
「じゃあ今夜はお父さんとお母さんの部屋で、お人形劇やってあげる。ほら」
秋奈はそう言って、手に持っている小さな手鏡を彗と宵に見せた。
月詠家に伝わる神器の一つ。「満月鏡」だ。
「やったー!」
彗はベッドから飛び起き、すぐに母の下に駆け寄った。
彗は、母が満月鏡を使ってやってくれる人形劇が大好きだった。
そして人形劇を喜ぶ年齢ではなくなってしまった宵も、母が満月鏡を使ってやってくれるそれはまだ好きであったので、ベッドから降りた。
子供部屋を出ると同時に宵はなるほど、と両親の作戦を理解した。母がこうして子供達を自分達の寝室に連れてくれば、子供達のベッドは空く。
その間にもう一人の「サンタさん」が子供部屋に入り枕元にプレゼントを置いてしまえば、姿を見られずに済む。
だが余計な事は口にしない。「サンタさん」を本気で信じている妹と、懸命にやってくれている両親の気持ちを挫くような真似はしたくないからだ。
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