017 あり得る”未来”
陽介の意識は、深い眠りとともに暗闇へ沈んでいった。
しかし次に目を開けたとき、そこは日常とはかけ離れた世界だった。
空は灰色に染まり、街は赤い警告灯の反射で揺らめいている。
遠くでは爆音と、叫び声……そして、何かが暴れている轟き。
(ここは……?)
陽介はビルの屋上の端に立っていた。
冷たい風が服を揺らす。
しかし足元の瓦礫は、まるで“今この瞬間”起きている現実のように生々しい。
視線を前に向けると、街のあちこちで黒煙が立ち、
その中心が妙に“計画的”なのがわかった。
主要駅前。
高速道路の分岐点。
空港の近く。
大規模商業施設の周辺。
——すべて、交通・物流の要衝ばかり。
(なんで、こんな……同時に……? 偶然じゃない……)
自分の声が頭の中で響いた。
その瞬間。
「陽介! 時間ないぞ!」
階段を駆け上がってきたのは、黒髪を振り乱した黒川倫だった。
タブレットを握る手が震えている。
「全国で異常能力反応……しかもパターンが同じだ。これ“自然発生”じゃない。誰かが仕掛けてる!」
続いて、肩で息をしながら星野そらが屋上に飛び込んでくる。
「先輩っ! 操られてる人たち……動きも能力の使い方も完全に統一されてます!普通の暴走じゃありません!」
そこへ、通信端末を耳に当てた滝本が焦燥を隠せない声で言った。
「……だめだ、救助要請が多すぎる……!各地の交通網、全部機能停止し始めてる!これ、全国マヒのカウントダウンだぞ!」
そして、背後では南が必死に叫んでいる。
「陽介くんっ! “重力系”が空港で暴れてる!あれ止めないと……飛行機が……!」
仲間それぞれが分担して、この異常事態に全力で食らいついている。
息も絶え絶えなのに、誰も諦めていなかった。
そこで、空からゆっくりと一人の影が降りてくる。
髪は淡い銀色。
瞳は深い青。
異世界じみた雰囲気をまとった青年だった。
彼は静かに地面に降り立つと、陽介だけを見つめて言う。
「……少年。この未来は“君の選択の先”だ」
陽介が息を飲む。まるで、”本当の自分”に話しかけているようだったからだ。
「俺が……能力を配ったせいで……?」
またもや自分の声。今度は自分の口が勝手に…。
彼は首を横に振る。
「違う。能力を配ったこと自体は、世界の調和を保つ選択にもなり得る。しかし――君は“第三者の介入”を想定していなかった」
第三者。
(……誰かが……この状況を“作った”……?)
そんな陽介の思考を遮るように、再び地上から黒い光柱が立ち上がった。
空を裂くような黒の閃光。
「陽介! まただ!」
黒川が叫ぶ。
「これ、完全に制御されてる! 能力者たち……やっぱり“操られてる”んだよ!」
星野が青ざめ、滝本は歯を食いしばり、南は涙を堪えていた。
ユラナスはほんの少しだけ陽介へ歩み寄り、
低い声で静かに告げる。
「少年。この未来を変えられるのは、君だけだ」
陽介の心臓が大きく跳ねた。
炎の街。
仲間の必死の声。
黒い光の中心で暴走する“誰か”。
そして、彼の厳しくも優しい眼差し。
視界が歪む。
音が遠のく。
街の悲鳴が薄れていき――
最後に聞こえたのは、銀髪の彼の声だった。
――選べ。黙ってみてるか、これを変えるか。
創造神は救いたい @hiyokonopiyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。創造神は救いたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます