崔 梨遙(再)

1161文字で、ご機嫌をうかがいます。

 それは僕が30代の前半の時です。その日は、珍しく早く帰れた日でした。金曜日でした。僕は地下鉄のホームで電車を待っていました。


 その時! 青いスーツの小柄な女性と目が合いました。何故か? ウインクされてしまいました。僕は嫌な予感がしたので顔をそらしました。すると、その女性が真っ直ぐ迷わず僕の目の前まで来ました。そして言いました。


『あんた、なんで無視するん? 今、私がウインクしたのを見たやろ? 私、アピールしたよね?』

『いやぁ、気のせいかと思って』

『いやいや、明らかに気付いてたやろ? なんで私を誘わへんの? 私やで、この私が誘ってるんやつで、ここは誘うべきやろ? 誘いなさいよ』


 僕、???でした。『私やで、この私が』ってどういうこと? ですが! 僕は例え相手が理不尽であっても、押しに弱いのです!


『僕はどうするのが正解なんですか?』

『私を食事に誘うべきやろ? まだわからんの?』

『すみません、食事に行きましょう』

『それでええねん、ムードのある店にしてや』


 納得できないまま、よく行く居酒屋へ。そこは証明が全て蝋燭、ムードはあります。


『ええ店やんか、合格やで』


 何が合格なのかわかりませんが、それから彼女(和歌子)が自分の仕事や過去の男性経験について語られました。全く興味が無かったので内容はおぼえていません。


『あんた、私を見てどう思う?』

『身長は156センチくらい?』

『当たってるけど、そこやないやろ?』

『痩せてる、スマート』

『確かにそうやけど、ちゃうやろ?』

『胸はBカップ』

『ちゃうやろ、Cやし。顔や顔、顔を見いや』

『メガネ』

『ちゃうやんか、美人やろ!』


 僕は押しに弱いのです。心にも無いことを言いました。


『そ、そうですね』

『わかったか? ほな、この後はどうするの?』

『え? 解散』

『ちゃうやん、ホテルに誘うべきやろ? 女にそこまで言わせたらアカンで』


 僕は押しに弱いのです。だって、その時は彼女もいなかったので断る理由が無かったんです。


 ですが! ホテルで僕は火がつきました。今まで主導権をとられ続けていましたが、ここで主導権を取り戻そうと思ったのです。


 誰にでも芸はあるもので、僕の手は女性達からゴッドハンドと呼ばれてきたのです。ここは腕の見せどころです。僕の手は頑張りました。


『あのな、テクニシャンなのもわかるし、頑張ってくれてるのもわかるけど、私は舐められる方が好きやねん』


 僕、撃沈。


 ですが、その後は僕の舌技が冴えました。ゴッドタン? ようやく僕は主導権を手に入れました。



 その後、何故か上から目線の和歌子とどうなったか? それは次回をお楽しみに。今回はお題の『手』をクリアしたくて書きましたので。コンテストには応募しないんですけどねー! 雰囲気だけ味わいたかったんです。僕はもうコンテストには応募しません。



お読みいただき、ありがとうございました!

m(_ _)m




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崔 梨遙(再) @sairiyousai

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